葉酸は、妊活中のご夫婦や妊娠中・授乳中の女性にとって必要不可欠な栄養素です。また、もともと葉酸は妊娠前後だけではなく、健康な体づくりに欠かせない重要な栄養素でもあります。ここでは葉酸とはどんな栄養素なのか、葉酸の必要性や摂取量について解説しています。
葉酸はビタミンB群の一種で、1941年にほうれん草から発見されました。体の調子を整える働きがあり、枝豆やブロッコリー、芽キャベツ、アスパラガス、モロヘイヤの他、柑橘類やレバーなどにも多く含まれています。
水に溶けやすい水溶性ビタミンで、一度にたくさん摂っても、余った分は尿に溶け込んで体外に排出されてしまいます。貯めておくことができないので、毎日摂ることが必要なのです。
近年、多くの先進諸国で、妊娠初期に葉酸の摂取が不足すると、赤ちゃんに神経管閉鎖障害という先天性異常の発症率が高まることが明らかにされました。そこで日本でも、厚生労働省が専門家による検討会を設置。2000年に妊娠の可能な年齢の女性に対して葉酸摂取に関する通知が出されました。
神経管閉鎖障害の発症は遺伝などを含めた多くの原因による複合的なものであり、葉酸摂取だけで発症を予防できるものではありません。しかしながら、葉酸を一定量摂取することよって発症のリスクの低減が期待できます。
神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させるには葉酸摂取が重要であり、併せてその他ビタミンなどを多く含む栄養のバランスのとれた食生活が不可欠です。
神経管閉鎖障害の予防のために葉酸を摂取する際、胎児の細胞が形成される妊娠初期に体内に葉酸がある状態が重要です。
妊娠に気付く時期というのは既に妊娠5~6週目頃になっていることが殆どですが、その頃から飲み始めても十分な葉酸濃度が得られない場合があります。
妊娠後期になってくると、多くの妊婦さんは貧血になりやすくなると言われています。葉酸は赤血球を正常に生成する働きにも関わるため、貧血予防にも重要なビタミンです。特にビタミンB12と一緒に摂取することで造血作用が高まると言われています。
厚生労働省は、妊娠を計画している女性は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するため、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、葉酸をはじめその他のビタミンなどを多く含む栄養のバランスがとれた食事が必要であると勧告しています。
先天異常の多くは妊娠直後から妊娠10週以前に発生しており、特に中枢神経系は妊娠7週未満に発生することが知られています。妊娠が発覚するのは早くてもその頃であるため、厚生労働省は、葉酸の摂取時期を妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までとしています。
葉酸は妊活のタイミングから摂取しよう※参考:神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
厚生労働省は妊娠前からの摂取を推奨していますが、妊娠が判明してからでも葉酸は健康のために大切な栄養素です。
葉酸は水溶性ビタミンで造血に関係すると言われています。妊娠すると多くの血液を必要とすることから、妊娠中期以降でも摂取を続けることが大切です。
妊娠中期〜産後も葉酸が必要な理由※参考:葉酸について(厚生労働省)
毎日、食事で野菜を摂取していれば葉酸が不足することはあまりありませんが、少し気をつけたいことがあります。それは、葉酸が水に溶けやすく、光と熱に弱いこと。野菜を水洗いしたり火を通したりすると葉酸が分解され、効力を失ってしまうのです。
葉酸以外のビタミンなら、調理しても効力は10~20%しか失われません。それに比べて葉酸は損失が30~40%と、割合が大きいのが特徴です。
さらに、食品から摂取した葉酸のうち、体内で利用できるのは50%程度といわれています。つまり、野菜の煮物や温野菜を食べても、もともと野菜に含まれていた葉酸の30%ほどしか活用できないのです。
普段の食生活からではうまく葉酸の栄養素を摂取できないため、厚生労働省ではサプリメントでの摂取を推奨しています。
サプリメントの葉酸はモノグルタミン酸型の葉酸と呼ばれ、食事からの葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)と比べて体内への吸収率が高いためです。
1日の必要量 | 1日の推奨量 | |
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妊活・妊娠中 | 食事から400µg + サプリメントから400µg | 食事から440µg + サプリメントから400µg |
授乳中 | 280µg | 340µg |
成人男性 | 200µg | 240µg |
日本人の食事摂取基準では、成人における葉酸摂取の推奨量は1日240µg 。それに加え、妊活中および妊娠中の女性は、サプリメントから1日400µg葉酸摂取を摂取するよう厚生労働省が推奨しています。
ただし、葉酸を必要以上に摂りすぎるとビタミンB12欠乏の診断が困難に。医師の管理下にある場合を除いて、1日の葉酸摂取量が1mgを越えないようにしましょう。