葉酸の効果や摂取量は?いつからいつまで必要?

葉酸を豊富に含む食材

妊婦に欠かせない栄養素として注目されている「葉酸」。妊娠中の方以外にも重要な栄養素のひとつです。でも、「いつからいつまで飲むべきか知らない」、「なぜ必要かは分からない」という方も多いのではないでしょうか?

ここでは、葉酸とはどんな栄養素なのか、働きや摂取量について神藤医師監修の下、解説していきます。さらに妊婦さんが葉酸を摂取すべき時期や理由、摂取する際のポイントについてもお教えするので、ぜひ参考にしてみてください。

医師が監修

御苑アンジェリカクリニック院長の顔写真

御苑アンジェリカクリニック 院長
神藤 慧玲

千葉大学医学部卒業
千葉県内・東京都内大学病院・東京都内総合病院
慶愛クリニック・慶愛大木クリニック
北里研究所東洋医学研究所漢方外来陪席を経て
御苑アンジェリカクリニックを開院
http://gyoen-angelica.com/

葉酸とは

葉酸が含まれている食材

葉酸はビタミンB群の一種で、ポリグルタミン酸型を含むプテロイルモノグルタミン酸の総称名です。1941年にほうれん草から発見されました。
赤血球の生成に不可欠であるため「造血のビタミン」と言われています。

水に溶けやすい水溶性ビタミンで、一度にたくさん摂っても、余った分は尿に溶け込んで体外に排出されてしまいます。貯めておくことができないので、毎日摂ることが必要な栄養素です。

葉酸の働きと効果

葉酸には、DNAやRNAなどの核酸やタンパク質の生合成を促進したり、正常な赤血球を生産したりする働きがあります。

また、葉酸はアミノ酸代謝にも関与しており、特にホモシステインという物質をメチオニンという必須アミノ酸へと変換させるときに使われます。ホモシステインは高濃度になると動脈硬化のリスクを増加させる可能性があるため、葉酸を十分に摂取することで動脈硬化を原因とする脳卒中や心血管疾患の予防に効果があると期待されています。

※参考:5.2.6.葉酸(厚生労働省、2009年5月)

1日の推奨摂取量

日本人の食事摂取基準では、男女ともに成人における葉酸摂取の推奨量は1日240µgです。

妊活中および妊娠初期の女性は、胎児の神経管閉鎖障害の予防のために普段の食事からの葉酸摂取推奨量240µgだけでなく、サプリメントから1日400µgの葉酸を追加で摂取することが厚生労働省から推奨されています。

妊娠中(中期〜後期)は葉酸の分解や排泄が促進されるという報告があり、元々の推奨量に240µgを追加した480µgの摂取が推奨されています。

時期別葉酸摂取量のグラフ

葉酸の食事摂取基準(µg/日)※1

「日本人の食事摂取基準 2020年版」(厚生労働省)より

男性
年齢等 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量2
0〜5(月) 40
6~11(月) 60
1~2(歳) 80 90 200
3~5(歳) 90 110 300
6~7(歳) 110 140 400
8~9(歳) 130 160 500
10~11(歳) 160 190 700
12~14(歳) 200 240 900
15~17(歳) 220 240 900
18~29(歳) 200 240 900
30~49(歳) 200 240 1,000
50~64(歳) 200 240 1,000
65~74(歳) 200 240 900
75以上(歳) 200 240 900










女性
年齢等 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量2
0〜5(月) 40
6~11(月) 60
1~2(歳) 90 90 200
3~5(歳) 90 110 300
6~7(歳) 110 140 400
8~9(歳) 130 160 500
10~11(歳) 160 190 700
12~14(歳) 200 240 900
15~17(歳) 220 240 900
18~29(歳) 200 240 900
30~49(歳) 200 240 1,000
50~64(歳) 200 240 1,000
65~74(歳) 200 240 900
75以上(歳) 200 240 900
妊婦(付加量)3,4 +200 +240
授乳婦(付加量) +80 +100

※1 プテロイルモノグルタミン酸(分子量=441.40)の重量として示した。
※2 通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)に適用する。
※3 妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(狭義の葉酸)を400 µg/日摂取することが望まれる。
※4 付加量は、中期及び後期にのみ設定した。

葉酸はいつからいつまで摂取すべき?

厚生労働省は、妊娠を計画している女性は赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するため、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までの間、葉酸をはじめその他のビタミンなどを多く含む栄養のバランスがとれた食事が必要であると勧告しています。

特に意識して摂取したいのは、妊娠の1か月以上前から妊娠3か月までとありますが、葉酸は妊娠前や妊娠初期だけでなく、出産後まで重要な栄養素であるため、妊娠前(妊活中)〜出産後(授乳期)まで摂取するのが理想です。

※参考:神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の促進について(厚生労働省、2000年12月)

妊活中から妊娠初期の葉酸の役割

妊娠前から葉酸を摂ることで充分な葉酸濃度に

先天性異常のリスク低減のために葉酸を摂取する際、胎児の細胞が形成される妊娠初期に体内に葉酸がある状態が重要です。
先天異常の多くは妊娠直後から妊娠10週以前に発生しており、特に中枢神経系は妊娠7週未満に発生することが知られています。

葉酸を体にしっかり蓄えるまでには1ヶ月ほどかかります。妊娠に気付く時期というのは既に妊娠5〜6週目頃になっていることが殆どですが、その頃から飲み始めても十分な葉酸濃度が得られない場合があります。
そのため、葉酸は妊娠を計画した時から積極的に摂り、妊娠に備えることが理想的です。

妊娠中期から後期の葉酸の役割

厚生労働省は妊娠前からの摂取を推奨していますが、妊娠が判明してからでも葉酸は健康のために大切な栄養素です。
葉酸は赤血球をつくるために大事な役割を果たすと言われています。妊娠すると多くの血液を必要とすることから、妊娠中期以降でも葉酸の摂取を続けることが大切です。

また、妊娠中期は妊婦が貧血となるリスクがもっとも高い時期です。積極的に葉酸や鉄を摂取することで、お母さんの貧血防止としても役立ちます。

出産後(授乳中)の葉酸の役割

母乳を通じて赤ちゃんに葉酸を届けるためには、お母さんが葉酸を摂取する必要があります。
母乳は血液で作られているので、母乳を通じて赤ちゃんにしっかり栄養を届けるために、葉酸の摂取をおすすめしています。赤ちゃんにも十分な栄養補給になると言われています。

また、お母さんの体も、産後の回復と育児に必要な体力の維持に、多くのエネルギーと栄養を必要としています。
葉酸には新しい細胞へと生まれ変わらせる「細胞分裂」をサポートする働きがあり、産後でダメージを受けた子宮の細胞分裂を行わせることで、子宮回復の手助けをしてくれます。

この時期は、赤ちゃんのことが最優先で自分の食事がおろそかになりがちな時期でもあります。
お母さんの健康が赤ちゃんの健康に直結する時期だからこそ、お母さんの体の栄養バランスを整え、栄養不足を補う目的でサプリメントを継続して活用してもいいでしょう。

※参考:妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(厚生労働省、2021年3月)

葉酸が不足すると

葉酸不足が長期間続くと葉酸欠乏症になる可能性があり、主に貧血やめまいなどの症状が見られます。基本的にはサプリメント等で効率的に葉酸を摂取することで症状は改善します。
成人の場合、通常の食事で葉酸が不足することはほとんどないとされていますが、妊婦さんは子どもの成長のために多くの葉酸を必要とするため不足しやすく、注意が必要です。

胎児の成長に影響

葉酸は細胞の分裂や成長に必要な栄養素です。妊娠初期は胎児の神経管形成がなされる時期であり、母体の葉酸が不足すると胎児の発達に異常が生じて神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが分かっています。

※参考:神経管閉鎖障害:葉酸摂取による予防(厚生労働省、2018年1月)

神経管閉鎖障害と葉酸の関係について詳しく知る

貧血や神経障害

葉酸はビタミンB12とともに赤血球を正常に生成する働きに関わるため、不足すると血液を作る機能に異常をきたし、貧血だけでなく神経や腸の機能に障害が起きることがあります。葉酸が欠乏して起こる貧血は「巨赤芽球性貧血」と呼ばれ、赤血球の機能が低下することが原因で発症します。

葉酸を過剰に摂取してしまったら

通常の食生活において葉酸を過剰摂取したことによる健康障害はこれまで報告されていません。葉酸は水溶性ビタミンであり、過剰に摂取した分は体内に蓄積されることなく排出されるため、食事で摂取できるほどの量であれば心配ないと言われています。

しかし、サプリメントの過剰摂取の場合には注意が必要です。
葉酸の摂取には耐容上限量(12~29歳なら900µg、30歳~64歳なら1,000µg)を超えないことが推奨されています。これを超えると、ビタミンB12欠乏症の診断を遅らせ神経疾患が進行する可能性や、生まれてくる子どもの小児ぜんそくの発症リスクが高まった等の報告もあり、相関するエビデンスははっきりしていないものの、摂取量をしっかり守ることは大切です。摂りすぎが心配な場合は、かかりつけの医師に相談しましょう。

※参考:葉酸摂取による利益と有害事象(厚生労働省、2021年5月)

摂取のポイント

葉酸は妊娠中の女性はもちろん、それ以外の方にも重要な栄養素です。食事やサプリで葉酸を摂取する際の注意点や妊婦さんの実際の声などを説明していくので、ポイントを押さえて効率的に摂取していきましょう。

葉酸は食事から摂取しにくい栄養素

毎日、食事で野菜を摂取していれば葉酸が不足することはあまりありませんが、少し気をつけたいことがあります。
それは、葉酸が水に溶けやすく、光と熱に弱いことです。野菜を水洗いしたり火を通したりすると葉酸が分解され、効力を失ってしまいます。
葉酸以外のビタミンなら、調理しても効力は10〜20%しか失われません。それに比べて葉酸は損失が30〜40%と、割合が大きいのが特徴です。

さらに、食品から摂取した葉酸のうち、体内で利用できるのは50%程度といわれています。つまり、野菜の煮物や温野菜を食べても、もともと野菜に含まれている葉酸の30%ほどしか活用できないのです。
食事から葉酸を意識的に摂取するためには、葉酸が多く含まれる食材をチェックしておきましょう。

葉酸を多く含む食品を詳しく知る

葉酸はサプリメントでの摂取が効率的

普段の食生活からではうまく葉酸の栄養素を摂取できないため、厚生労働省では特に妊活中、妊娠中の女性にサプリメントでの葉酸摂取を推奨しています。

サプリメントの葉酸はモノグルタミン酸型の葉酸と呼ばれ、食事からの葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)と比べて体内への吸収率が高いためです。

また、葉酸は妊娠中の貧血予防や産後の体力回復、授乳中の体力維持にも役立ちます。妊活中から妊娠中、産後まで葉酸を摂ることを考えると、毎日続けやすいサプリメントがおすすめと言えます。

※参考:葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果(厚生労働省、2021年6月)

BELTAのアンケートでは半数以上が妊娠前から葉酸を摂取したと回答

実際に妊娠中の女性はどのように葉酸を摂取していたのか、BELTAが独自アンケートを行いました。

「葉酸サプリを飲んでいますか?」と質問したところ、7割以上の方が『はい(73.7%)』と回答しました。

さらに、「葉酸サプリはいつから飲み始めましたか?」と質問したところ、半数以上の方が『妊娠前から(55.1%)』飲み始めていることが分かりました。

妊娠前から葉酸サプリを継続的に飲んでいる妊婦さんが半分以上というアンケート結果となりました。赤ちゃんの健康のためにも、妊娠中に不足しやすい葉酸を、妊娠前から積極的に摂取していきたいですね。

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