妊活のために男性がやるべきこと

若い夫婦

不妊の原因の半分は男性だと言われています。そのため、女性だけでなく男性も自分のこととしてとらえ、協力して取り組むことが妊活において重要です。

この記事では、男性が妊活に向けて行うべき準備や、精子の質を高めるためにできることをまとめています。

妊活マイスターが監修

BELTA専属妊活マイスターの顔写真

BELTA専属
公認上級妊活マイスター
(一般財団法人 内面美容医学財団認定)
大島 由紀 (おおしま ゆき)

不妊の原因の半数は男性にある

不妊の原因のグラフ

WHO(世界保健機関)の調査によれば、不妊の原因の約半分が男性にあると言われており、男性側の問題で妊娠できずにいることを「男性不妊」と呼びます。不妊になってしまう原因は、精子に問題がある場合や、性生活に問題がある場合など様々です。

精子に問題がある場合

男性不妊の原因の82.4%は造精機能障害と言われています。
造精機能障害は以下のように精子形成が上手くできていない状態のことを指します。

  • ・精子が全く作られない
  • ・一般的な男性の精子の数に比べて数が少ない
  • ・精子の運動率が低い
  • ・奇形の精子の数が多い

精子が作られる段階に問題があると、いくら性交渉を重ねても妊娠に至ることは難しいと言われています。

性生活に問題がある場合

勃起や射精などの性生活に問題がある状態を性機能障害と呼びます。

性生活に問題が生じるのは主に器質的な要因と、心理的な要因の2通りが考えられています。

器質的な要因は高血圧や糖尿病などの生活習慣病、心理的な要因は緊張やストレスなどがあります。「排卵日付近に性交渉をしなければならない」というプレッシャーから射精できなくなるといったケースも増えているようです。

※参考:男性不妊について(子ども家庭庁)

男性が妊活のためにできる準備

男性が妊活のためにできることを紹介します。

何気ない普段の生活習慣の中にも妊娠を遠ざけてしまうこともあるため、妊活の知識を付けておくことが大切です。

精液検査

精液検査

男性不妊検査の代表格が精液検査です。泌尿器科や不妊症が依頼などで受けることができます。
検査結果によって、自然妊娠が可能なのか、人工授精や体外受精が必要なのかの妊活の方向性を考えることができます。
検査では、下記のような項目に基づき精子をチェックしています。

  • ・精液量
  • ・精子の数
  • ・精子の運動率
  • ・精子の形態やDNA

精液に問題があることを調べないまま妊活を進めていくと、不妊治療などでお金や時間を費やしてしまうことになるため、重要な検査となります。

禁煙

タバコ

血流を悪化させるタバコは妊活をはじめ健康の大敵。血流が悪くなることで精子の質の低下や、DNAの損傷、性欲減少や勃起不全(ED)といった影響が出てきます。精子のDNAが損傷すると流産や死産のリスクが高まってしまいます。タバコほどではありませんが、加熱式タバコにもタールが含まれているため、控えるようにしましょう。

また、喫煙することでパートナー側が煙にさらされる「受動喫煙(副流煙)」も悪影響があります。妊活をはじめるのであれば禁煙はマストと思っておきましょう。

※参考:喫煙によるその他の健康影響(厚生労働省)

※参考:女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響(厚生労働省)

下半身を温めない・圧迫しない

膝の上でパソコンを使用する男性

「精子をつくる精巣(睾丸)は熱に弱い」と言われているため、下半身を温める行動はできるだけ避ける必要があります。
また、下半身を圧迫することもできるだけ避けましょう。股間周辺に熱がこもるだけでなく、血流も悪くなるため精子の質が下がる要因となります。

普段の生活の中で、下記に当てはまる方は注意しましょう。
下着による締め付けも影響する場合があるためボクサータイプからトランクスに変更するのもおすすめです。

  • ・長時間座りっぱなし
  • ・膝の上にパソコンを置いて作業する
  • ・スキニージーンズのようなぴっちりしたパンツを履く
  • ・バイクや自転車に長時間乗る
  • ・長時間のサウナや長風呂

フィナステリドが含まれた育毛剤などに注意

フィナステリドが含まれた育毛剤

育毛剤やAGA治療薬などに含まれるフィナステリドといった成分には男性ホルモンを抑制する働きがあると言われています。性欲減退や精子の質の低下といった副作用により妊活に悪影響を与えることが多いです。
普段から育毛剤や発毛剤を利用している方は、妊活に取組む際には成分に注意し、控えるようにしましょう。

できるだけストレスを溜めない

頭を抱えている男性

女性だけでなく男性にもストレスは悪影響があります。心身ともにすこやかに過ごせるように“メンタルケア”を心掛けることが大切です。

特に妊活を始めると、「排卵日にタイミングを合わせる」といったことが必要になってきます。男性にとってはプレッシャーに感じてしまい、ストレスに繋がってしまうケースも少なくありません。

また、精液検査などで男性側に問題があったことを知ることで、そのショックからストレスを感じてしまう男性も多いと言われています。不安や悩みがある場合はパートナーに打ち明けて、夫婦で向き合っていくことが大切です。

太り過ぎないようにする

体重計

肥満の女性は妊娠しにくい体質ということは知られていますが、肥満の男性も不妊の原因となると言われています。

肥満体質の男性は精巣の周りにも脂肪が多いため精巣が温められているという状況になっています。
また、テストステロンという男性ホルモンも低下し、精子の数や精液量が減少してしまいます。

一般的に肥満というのはBMIが25以上の数値の人を指します。生活習慣を整え、BMI25以下を維持するようにしていきましょう。

あなたのBMIをチェックしてみましょう。
入力フォームに身長と体重を入れて「BMIを計算する」をクリックしてください。

身長

cm

体重

kg

※参考:BMIと適正体重(Keisan)

運動はほどほどに

適度な運動は健康維持、体重コントロール、ストレス解消などのために必要です。

しかし、過度な運動やトレーニングは疲労が溜まりやすく、下半身を温め過ぎてしまう原因や、性欲減退につながってしまいます。

妊活中の運動は週に1~2回程度に抑え、疲れを溜めないようにしましょう。睡眠をしっかり取ることも疲れを溜めないポイントです。

精子の質を高めるためにできること

精子は70日以上かけてつくられると言われています。男性不妊の原因はまだまだ解明されていないことも多いですが、普段から質を高めることを意識しておきましょう。

禁欲しない

「禁欲すると精子が溜まって数が増えるのでは?」と思っている方もいるかと思います。

しかし、射精の間隔が開き過ぎると精子が古くなることで運動率が落ち、逆に間隔が0日だと精子の数が少なくなってしまいます。禁欲はせず1〜2日くらいの間隔で射精するのが理想です。

睡眠をしっかりとる

睡眠はストレスの緩和や疲れを取るためにとても重要です。仕事などでなかなか難しい場合もあるかもしれませんが、できるだけ1日7~8時間ほど確保できるようにしましょう。

実際に、2020年に行われた研究では、長すぎるもしくは短すぎる睡眠時間や、質の悪い睡眠が精子の数や運動に悪影響を与えることが報告されています。

※参考:Sleep duration and quality in relation to semen quality in healthy men screened as potential sperm donors

バランスの取れた食生活

これを食べれば必ず精子の質が良くなるという食べ物はありません。しかし、健康的な体を維持することは妊活の大事なことでもあります。

栄養が偏っていると精子の数や質、性欲などにも関わってくるため、バランスの取れた食生活を心掛けることが大切です。

その中でも男性には亜鉛、ビタミンD、コエンザイムQ10といった栄養素が良いと言われているため、意識して摂取してみましょう。

男性妊活の今とこれから

男性の妊活参加は当たり前に

妊活は「女性だけ」「男性だけ」で進められるものではありません。
男女が揃ってやっとスタートすることができます。

「妊活」という言葉が出てきてから10年。
妊活を巡る男女の意識は変わってきました。
医療の発展により、男性の不妊を取り巻く現状も明らかになってきています。
BELTAでも男性の妊活や不妊について世の中に対して根気強く発信し続けてきました。
結果、今では「男性不妊」や「男性妊活」という言葉を耳にする機会も増えました。

BELTAで実施した現在妊活中の方を対象にしたアンケートでは「不妊の原因の約半数が男性側にある」ということを知っている人は9割以上にのぼりました。

男性不妊認知率

こうした知識の広がりと共に、男性が妊活をするのが当たり前な世の中へと変わりつつあります。

妊活相談の99%は女性から

一方で、新たな課題も浮き彫りになってきました。

BELTAでは「妊活マイスター」や「胚培養士」など妊活に特化した専門家が無料でご相談にお応えする窓口を開放しています。
こうした窓口にこの1年間で寄せられた相談の内訳を見てみると…
相談している人の99%は女性で、男性からの相談は1%もいませんでした。

また、女性からの相談の中には
「妊活に対する温度感の違いを感じてつらいです」
「妊活のすすめ方について旦那と上手く話せない、周囲にも相談できないので孤独を感じてしまう」
「検査の結果主人に要因があることがわかりました、どのように声をかければよいのかわからずにいます」
という夫婦間の関係性や男性側の要因に関するものも多く寄せられています。

悩む女性

アンケートで見えてきた
妊活における男女間ギャップ

相談窓口の現状を受けて、BELTAでは妊活中の女性を対象に「妊活におけるパートナーとの関係やコミュニケーション」についてアンケートを実施しました。
アンケートの結果、女性たちのパートナーに対する想いと妊活を進める男女間の新たな課題がみえてきました。

パートナーは妊活に協力的ですか?

パートナーと妊活を進められている人はどれくらいいるのでしょうか?パートナーの協力状況について聞いてみました。

パートナーの協力状況

協力的(とても協力的・どちらかというと協力的)と回答した人が全体の84.3%と大半を占める結果となりました。

妊活を始める時のパートナーとのやりとりは?

妊活を始める時にパートナーとどのようなやりとりがあったのかを聞いてみました。

妊活開始時コミュニケーション

「妊活の進め方について会話をした(どのように妊活を進めたいのか)」という人が最も多く40.3%おり、「子供を望む温度感について会話した」という人が24.6%と続きました。

また、全体の22.5%の人は「特別なコミュニケーションは取らず、何となく妊活を始めた」ようです。

妊活のために検査を受けたことはありますか?

男性の不妊について知っている人が多い中で、どれくらいの人が検査を受けているのでしょうか?

検査実施状況

妊活のための検査受診状況について聞いたところ、男女共に妊活のための検査を受けている人は全体の50.3%と半数にのぼりました。
一方で、検査を受けているのが女性のみの人も全体の15.7%いました。

パートナーが男性不妊の診断を受けたことはありますか?

男女共に検査をしている人のうちパートナーが男性不妊の診断を受けたことがある人は全体の37.5%いました。今回のアンケートでは、検査を受けた男性の2~3人に1人が男性不妊の診断を受けていることになります。

男性不妊診断

妊活において男性に求めることは?パートナーはそれをやっている?

妊活において「男性にやってほしいと思うこと」と実際に「パートナーが実施している行動」について聞いてみました。

パートナーへの期待と実際

アンケートの結果、妊活において女性が男性にやってほしいと思うことと、実際にパートナーが実施している行動にはギャップがあることがわかります。

妊活において、女性が男性にやってほしいと思うこととして
「妊活について相談したら真剣に話を聞いてほしい(65.4%)」
「妊活や治療について同じ知識を持ってほしい(65.4%)」
が同率一位に並びました。

その次にやってほしいと思うことに
「同じ温度感で妊活に臨んでほしい(62.8%)」
「性交渉の回数やタイミングを一緒に話し合って欲しい、気にかけてほしい(61.3%)」
「妊活を意識した生活(食事や健康管理など)を送ってほしい(53.9%)」
が続きました。

また、妊活において女性が男性にやってほしいと思うことと実際の行動のギャップも見てみました。

ギャップ図

ギャップが大きいものとして
「妊活や治療について同じ知識を持っているか」
「同じ温度感で妊活に臨んでいるか」
「妊活を意識した生活(食事や健康管理など)を送っているか」
「妊活についての情報収集を一緒にしているか(病院探し、治療方法、保険などについて)」
が目立ちました。
※女性側が感じているギャップになります。


アンケートの結果を見てみると、8割以上の女性は妊活に対してパートナーが協力的だと感じており、男性の妊活への参加が進んでいることがわかります。
一方で、女性が妊活において男性に期待する行動と実際のギャップを聞いたところ、妊活に対する「知識」や「情報」「健康意識」「温度感」においてギャップを感じている人が多いようです。

妊活経験のある男女ヘインタビュー

アンケートでは、妊活に対する意識や温度感について、女性が男性とのギャップを感じていることが明らかになりました。

では、実際に妊活をする際に、どのような時に意識や温度感の違いを感じてしまうのでしょうか?また男性はどのように思っているのでしょうか?
今回BELTAでは、実際に妊活を進めてきた男女に話を聞いてみました。

Iさん
男性 1991年生まれ

Kさん
女性 1992年生まれ

Iさん27歳、Kさん26歳の時に妊活をスタート。タイミング法を取るもうまくいかず不妊検査を受けたところ男性不妊が発覚。自然妊娠は難しいといわれたことから3回の人工授精を行うもうまくいかず。その後ステップアップし、体外受精2回目にて妊娠・出産。妊活にかかった期間は約2年。

妊活を進めるにあたってご夫婦のコミュニケーションで大変だったことはありますか?

「大変」だと思ったことはパッと思いつかないのですが…
ただ、どのような時もいつも通り接したり、残念な結果になった時も明るく振る舞うことを心がけるようにはしていました。

私は、主人との喧嘩がどんどん増えていくのがつらかったです。
二人で望んでやっている妊活なのに、それが原因で仲が悪くなっていく感じがして、何のために妊活してるんだろう…と考えてしまうことも度々ありました。

それはつらいですね。どのようなことで喧嘩をされていたのですか?

妊活が上手くいかず余裕がなくなってくると「なんで私だけ?」という感情が溜まってくるんですよね。
「なんで私だけ妊活の状況を把握してるんだ?」
「なんで私だけ仕事を調整してクリニックに行ってるんだ?」
という感じで。
そういう不満が、ちょっとしたきっかけで溢れてきて言い合いになるという感じでした。
基本は私が一人で怒っていました。笑

喧嘩になった時ご主人はどう感じていましたか?

妻がどんなに辛い思いをして妊活をしているかわかっていなかったことを反省しました。
一方で「あなたは何もやっていない」と言われたことには、不快な気持ちになったこともありました。

私もその時は「自分ばかり頑張っている」と思っていたので‥。
喧嘩の際に主人に「じゃあ、何をやれば良いの?」と言われたんです。
正直「いや自分で考えてよ」と思いましたが笑、自分の身体や妊活のことを何も共有出来ていなかったことにも気づきました。
それからは、一度妊活を進める上での知識や今の状況を共有する場を設けました。

どうしても自分が代われないことはありましたが、どうすれば妻の心身の負担を和らげることが出来るかを意識していました。
気分転換に外食に誘ってみたり、仕事終わりに一緒に散歩することを提案してみたり。
あとは、少しでも健康になるために精子に良くないと言われていた湯船に浸かることを避けたり、一緒にサプリを飲むようにしたりと自分に出来ることを意識するようになりました。

主人は湯船に浸かるのが大好きだったので、湯船を控えているのを知った時はびっくりしました!主人が一緒に動こうとしてくれているのがわかったり、あとは主人と話すようになって、実は自分だけが動いているわけではないんだと気づけました。
それまではずっと「一人で頑張っている」という孤軍奮闘している感覚があったのですが「二人で進んでいる」感覚になれて言い合うことがかなり減りました。

ご主人は気持ち的に何か変わったことはありましたか?

これまではタイミングを取る際や通院のスケジュールなど妻が全て把握して一人でやってくれていたので、どこか他人事…というと良くないのですが、どこかでそのような感覚になっていた部分がありました。
色々と話したり行動していく中で他人事になっていてはダメだと気づきました。

妊活を振り返ってみて思うことは?

女性のほうが身体の負担や時間の拘束が多いので、男性にできることはないと思っていましたが、自分の健康管理や女性の負担を減らすことなど、男性にもできることをすることが大切だと感じました。

これは、妊娠できたから言えることだと思いますが、妊活で色々とぶつかり合って改めてお互いの気持ちや本音を知ることが出来たのは、今の良い関係性に繋がっていると思います。
これからも妊活だけでなく色々な場面で「自分だけが頑張っている」と感じてしまう時は、落ち着いて主人の行動を見てみたり話を聞いていこうと思います。


インタビューから、妊活をする男女のリアルな気持ちやコミュニケーションが見えてきました。
妊活の形は十人十色、カップルによりその形や関係性は違います。
インタビューしたカップルとは違う形のコミュニケーションや悩みが世の中にはたくさんあると思います。

ただ、妊活を進める中で、まず自分が出来る行動をしてみること、自分だけでなく相手の行動にも目を向けてみることは重要なことの一つかもしれませんね。

男性妊活のアップデートに向けて

男性の妊活参加が当たり前になってきている今、BELTAは「男性妊活をアップデート」する時が来ていると考えています。

妊活においては「身体の状態の把握」や「通院の頻度」などから、どうしても女性のほうが物理的に妊活に関わる時間が多くなります。
こうした中で、男女で妊活に関わる時間の差が広がり、気づかない間に男女間の意識や温度感のギャップが生まれているのかもしれません。

しかし、男性も女性も、妊活の当事者であることは変わりません。
BELTAは「男性妊活をアップデート」して、男女が当事者として同じ意識や温度感で妊活に取り組めるような働きかけを行います。

妊活夫婦間コミュニケーションイベント

妊活マイスターイベント

イベントではこれまでに多くの妊活中の女性が抱えるお悩みをみてきた妊活マイスターが、夫婦が妊活を進める上でコミュニケーションにおいて抱えがちな悩みをもとに、声かけや巻き込み方のポイントをお伝えしています。
これから妊活を始める男女や妊活しているけど夫婦間コミュニケーションや温度差に悩んでいる方におすすめです。
オンラインなので、男性または女性のみでもカップルでも誰でも気軽にご参加いただけます。
※妊活中の夫婦間コミュニケーションイベントは不定期開催です

BELTAのイベントはこちらから

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