出生前診断やNIPTとは?受ける人の割合や体験談も紹介

医師からの十分な説明を受けている妊婦

晩婚化や出産年齢の高年齢化とともに、出生前検査への関心が高まっており、出生前診断やNIPTについて聞く機会も増えているのではないでしょうか。
この記事では、出生前診断のメリットデメリットやNIPTについて詳しく解説し、実際に検査を受けたママの体験談もご紹介します。

助産師が監修

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BELTA専属 助産師
立谷 紗耶華 (たちや さやか)

出生前診断とは

出生前診断とは、あらかじめ妊娠中に胎児の健康状態を調べる検査のことです。生まれてくる赤ちゃんの状態に合わせて、最適な分娩方法や療育環境を検討し準備することを主な目的として行われています。

出生前診断は「形態異常を調べる検査」と「染色体異常を調べる検査」に分けられます。
具体的に、形態異常を調べる検査で代表的なものは、妊婦検診で行う超音波(エコー)検査です。人間の耳には聞こえない高い超音波装置を利用して胎児の形態を調べます。
一方、染色体異常を調べる検査は、妊婦の血液や羊水などを採取して行う検査を指します。

また一般的には、出生前診断と言うと「染色体異常を調べる出生前診断」を指している事が多いです。

出生前診断の具体的な診断内容

出生前診断で検査できる内容は、どのような検査をするかによっても異なりますが、具体的には以下の染色体異常を検査することができます。

  • ・パトー症候群
  • ・エドワーズ症候群
  • ・ダウン症候群
  • ・ターナー症候群
  • ・トリプルエックス症候群
  • ・クラインフェルター症候群

他にも転座(染色体の一部が切断され、他の染色体に付着してしまう異常)や、欠失(染色体の一部が無い状態)などの染色体の構造異常も検査項目に含まれています。どの染色体にどんな異常が発生するかによって、重篤な症状が出てしまったり、反対に症状が軽い場合もあります。

※参考:兵庫大学 検査を受ける前に理解を深めるサポートブック
※参考:NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書
※参考:出生前診断のメリットとデメリット|あなたは出生前診断を受ける?

出生前診断を受ける人の割合は7.2%

実際に染色体異常を調べる出生前診断を受ける人の割合はどのくらいいるのか、データをみていきましょう。

1998年から2016年に行われた調査によると、日本でのNIPTを含む出生前診断の受検件数は、全出生数97.7万件のうち7.2%、高齢妊婦27.8万人のうち25.1%に上ることが分かっています。
晩婚化や晩産化が進んでいる日本においては、今後も検査のニーズが高まっていく事が予想されます。

※参考:日本における出生前遺伝学的検査の動向1998-2016,日本周産期・新生児医学会雑誌2018;54:101-107

出生前診断のメリットデメリット

出生前診断のメリットとデメリットとしてどんなことが挙げられるか見ていきます。

出生前診断のメリット

出生前診断のメリットとしては、赤ちゃんを受け入れる準備を早くから時間をかけて行えることが挙げられます。

出生前に赤ちゃんの状態を把握することで、適切な分娩方法(帝王切開や経腟分娩)を選ぶことができます。
その上で、生まれた赤ちゃんを産科から小児科・小児外科・小児心臓外科などへスムーズに引き継ぐことが可能になります。

このように赤ちゃんの病気や異常を事前に知ることで、その対処法について早くから検討し、十分に備えることができるのが、出生前診断の大きなメリットと言えます。

出生前診断のデメリット

デメリットとしてまず挙げられるのは、心理的なストレスです。
特に妊婦さんにとって、産むか産まないかの決断は非常に苦しいもので、一人で苦しみを抱え込んでしまう場合もあります。

検査の種類にもよりますが、例えば羊水検査など遅い時期に実施される検査では、その結論を出すまでが数週間しかありません。胎動を感じ始める時期にも重なるため、精神的な負担が大きくなり、うつ状態になる方もいます。

検査を受ける前段階で、「どのような疾患が分かるのか」「疾患のある子どもを育てるために必要な事は何か」を事前に理解し、もしも結果が陽性だった場合に下す決断をあらかじめ決めておくことが大切です。

また、出生前診断では検出できない疾患もあることが、デメリットとして挙げられます。
検査対象である染色体疾患は先天性疾患の一部に過ぎません。 例えば、環境因子による障害や自閉症を含む発達障害などは、根本的な原因がまだ解明されておらず、出生前診断で陰性と診断されても、出生後に疾患が判明する可能性もあります。

倫理的な観点からも、出生前診断は、中絶が可能な時期に先天異常を知ることができるため、障がい者団体が懸念を表明しているのも事実です。

※参考:出生前診断について 京都済生会病院
※参考:NIPT 等の出生前検査に関する専門委員会報告書

十分な説明と
遺伝カウンセリングを受けましょう

出生前診断を受ける上で最も避けたいのは、先天異常や出生前診断・検査の意義を詳しく知らされず、強い不安を抱えたまま自己判断してしまうことです。

出生前診断は、全ての妊婦が受けなければいけない検査ではありません。
出生前診断を受けようと考えている妊婦さんおよびパートナーは、医師からの十分な説明を受け、検査や疾患について正しく理解をしましょう。
また、検査を行う医療機関の選定も重要です。検査を受ける際は、遺伝カウンセリングなど精神面でのサポートが十分に整っている医療機関を選びましょう。

  • 遺伝カウンセリングとは?

      遺伝に関する不安や疑問を抱える方々に、科学的根拠に基づく正確な医学情報を分かりやすく提供し、心理的・社会的サポートを行うカウンセリングです。
      遺伝医学に精通した臨床遺伝専門医の資格をもつ医師と認定遺伝カウンセラーが担当し、話を十分に伺いながら、当事者の自律的な意思決定を支援しています。

※参考:日本遺伝カウンセリング学会

出生前診断の種類と比較

出生前診断といっても様々な検査があり、広い意味での出生前診断には、以下のような検査が含まれています。

  • ・超音波(エコー)を使った画像検査
  • ・胎児や胎児由来のサンプルを使った細胞遺伝学的、遺伝生化学的、分子遺伝学的、細胞・病理学的な検査
  • ・着床前検査
  • ・母体の血液を使った検査(母体血清マーカー、NIPT)

また出生前診断は、検査内容によって「形態異常を調べる検査」か「染色体異常を調べる検査」という分け方がありますが、それ以外にも、検査結果で診断が確定するか確定しないかによって「確定検査」か「非確定検査」という分け方がされています。
「非確定検査」には母体血清マーカー検査、コンバインド検査、NIPT、胎児超音波検査が含まれ、「確定検査」には羊水検査や絨毛検査が含まれます。

各出生前診断の種類分けの解説図

非確定検査(非侵襲的検査)

非確定検査はママや胎児にリスク無く検査することができる検査方法です。
検査精度が低いことから、基本的にはリスク評価やスクリーニングとして、自覚のない異常を暫定的に見分ける目的で使われています。

  • メリット

    • ・母子へのリスクが少ない
    • ・妊娠して早い段階で受けることができる
  • デメリット

    • ・他の検査に比べて費用が高い
    • ・陽性結果が出ても確定ではないため確定検査を受ける必要がある

確定検査(侵襲的検査)

現在の確定検査は、お腹に針を刺して羊水を調べる「羊水検査」や、胎盤の絨毛組織を採取して調べる「絨毛検査」という検査方法が存在しています。非確定検査と比べると検査精度は高いですが、お腹に針を刺して行うといった過程が発生してしまうため、検査による流産死のリスクが出てきます。
数値としては羊水検査は0.1~0.3%、絨毛検査は1%ほどの流産のリスクがあると言われています。

出生前診断のリスクをできるだけ避けるために、確定検査の前に非確定検査を提案する医療機関も増えて来ています。

  • メリット

    • ・検査精度が高い
  • デメリット

    • ・流産死のリスクがある

各検査の比較

各検査の具体的な内容や費用について、以下の表にまとめました。※表は横にスクロールする事ができます。

非確定検査(非侵襲的検査) 確定検査(侵襲的検査)
精密超音波検査 コンバインド検査 新型出生前診断(NIPT) 母体血清マーカー検査 羊水検査 絨毛検査
検査時期 11週〜30週 11週〜13週 10週〜22週 15週〜18週 15週以降 11週〜14週
結果が出る
までの期間
当日 2週間 2週間 2週間 2週間〜4週間 2週間〜3週間
方法 母体の腹部に
機械を当てる
母体の腹部に
機械を当てる
採血
採血のみ 母体の腹部に針を刺す
安全性 非侵襲的(安全な検査) 流産率1% 流産率0.3%
対象の
先天性疾患
各臓器の形態・
動き・数・
大きさの異常
13トリソミー
18トリソミー
21トリソミー
13トリソミー
18トリソミー
21トリソミー
13トリソミー
18トリソミー
21トリソミー
二分脊椎
すべての染色体の変化 すべての染色体の変化
費用(目安) 1〜5万円 3〜5万円 20万円前後 2〜3万円 10〜20万円 10〜20万円

※参考:京都済生会病院出生前診断について
※参考:兵庫大学 検査を受ける前に理解を深めるサポートブック

NIPT(新型出生前診断)とは

NIPTとは無侵襲的出生前遺伝学的検査(Non-invasive prenatal genetic testing)の略称です。
妊婦さんから採血をし、胎児のDNA断片を解析することで染色体異常を持っているか調べることができます。

従来の非確定検査は「コンバインド検査」や「母体血清マーカー検査」が主で、検査精度が低いことが懸念されていましたが、2013年に臨床として日本に導入された「NIPT(新型出生前診断)」は、非確定検査の中でも検査精度が高く、採血のみで実施できてリスクが少ないことで注目を集めています。
そのため、出生前診断を行う場合はNIPT(新型出生前診断)から行う人が増えて来ており、実施施設も年々増加傾向となっています。

NIPTの基本的なメリットデメリットは、先に述べた非確定検査で解説したものとは若干違いがあります。
ここではそのNIPTが持つ特徴について、詳しく解説していきます。

※参考:NIPT実施施設数の推移(厚生労働省)

①リスクが殆どない

非確定検査の特徴でもありますが、NIPTも血液の採取での検査となるため、流産死のリスクが殆どありません。妊婦さんの血液中に含まれるDNA断片を解析することで、ダウン症候群(21トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)の可能性を検出します。

②他の非確定検査より精度が高い

NIPTの最大の特長がこの検査精度の部分です。リスクが殆どないという点では他の非確定検査も同様ですが、検査精度で比較すると他の非確定検査は80~83%と言われている中、NIPTは99%と言われています。

的中率も高く、NIPTで陰性と判定された場合は、確定検査を回避することができます。

③認可施設と認可外施設がある

NIPTを行う施設は認可施設と認可外施設の2つに分けられます。

認可施設とは日本医学会や日本産婦人科学会から認定を受けた施設のことを呼びます。認可施設には専門医が在籍していて、専門外来を設置しています。しかし、認定を受けている施設は全国的にも少なく、検査を受けるための条件もいずれかに該当する必要があります。

認可施設で検査を受けるための条件

  • ・出産時の年齢が35歳以上の方
  • ・超音波検査などで染色体異常の可能性があると指摘された場合
  • ・過去に染色体異常の子どもを妊娠、出産したことがある場合
  • ・両親のいずれかに均衡型ロバートソン転座があり、遺伝による染色体異常の可能性がある場合

※2022年4月以降、検査前の遺伝カウンセリングの対象を全妊婦順次拡大予定、カウンセリング結果によっては上記対象外の妊婦でも検査可能となる

一方、認可外施設は認定を受けていない施設ということもあり、良くないイメージを持たれることもありますが、「認可外=違法」ではありません。国が定める法令などはしっかり遵守した上で検査を実施しています。

認可外施設の特徴

  • ・年齢制限がない35歳未満でも検査が可能
  • ・紹介状が無くても検査を受けられる
  • ・検査結果が出るまでが認可施設と比較して早め
  • ・確定検査に進んだ場合の負担が大きい
  • ・来院は1回のみ
  • ・3つのトリソミー以外の項目も検査が可能
  • ・夫婦同伴の必要がない

認可施設と認可外施設の検査の精度には殆ど差はなく、 大きな違いは検査を受けるための条件面となります。

④費用や保険適用・医療控除

NIPT検査は保険適用外で、基本的に自費診療となり、NIPTは医療費控除の対象になりません。
検査を行う施設によっても異なりますが、NIPTは20万円前後の検査費用が相場となっていて、他の非確定検査と比べると費用は高めです。カウンセリング費用も別途で必要になる施設もあります。

またNIPTをはじめ出生前診断は、治療ではなく検査とされているため、医療控除や保険の適用対象外となります。
検査を受けるかどうかは費用面も考慮した上で、検討しましょう。

※参考:NIPT|国立成育医療研究センター 産科

※参考:母体血を用いた出生前遺伝学的検査の費用

実際に出生前診断を受けたママの体験談

ここでは、出生前診断を受けた方の体験談をご紹介します。

体験談①
リスク低く検査を受けることが出来たのが良かった」

体験者

N.Mさん(当時20代)

今回受けた検査はどんな検査でしたか?

NIPT(新型出生前診断)という採血でお腹にいる赤ちゃんの染色体異常を調べる検査です。
私が検査した項目は、全染色体の異常確認(21.18.13トリソミー含む)・微小欠失の異常確認・性別をを知ることが出来るものでした。
※上記検査項目は、認可外施設のみの項目

なぜ出生前診断を受けようと思ったのですか?

初めての妊娠で不安なことが多い中で、事前に子どもの状態を知っておくことで金銭面や働き方、その他心の準備ができると思い受けることにしました。

出生前診断の中でも新型出生前診断にした理由を教えてください。

ネットなどで幅広く情報収集を行う中で、色々な種類の検査があるということを知りました。
検査を行うにあたって、出来る限りお腹の赤ちゃんや自分の身体に負担が少ない方法を選びたく、採血で検査が出来る新型出生前診断を受けることにしました。
新型出生前診断で得られる結果が確定診断でないことは理解しながらも、リスク低くある程度確度の高い結果を得られることが魅力的でした。

以前からNIPT(新型出生前診断)のことはご存じでしたか?

出生前診断については知っていたものの、新型出生前診断については知らなかったです。ネットや口コミなどで調べる中で、出生前診断にも色々と種類があることを知りました。

実際に受けてみて感じたことを教えてください

受けて良かったです。やはりリスク低く検査を受けることが出来たのが良かったですし、検査を受けることで妊娠中の不安を少し取り除くことができました。
一般の妊婦検診でも中期や後期にエコーでのスクリーニング検査を受けますが、早い段階で検査を受けられたのは良かったです。

第2子を妊娠したときも出生前診断を受けたいと思いますか?

はい。第2子妊娠の際には、今より年齢が上がることで、第一子の妊娠時とはまた違う不安もあると思うので検査を受けようと考えています。

※記載の体験談は個人の感想でございます

体験談②
安易な気持ちで受けてはいけないと感じた」

体験者

S.Tさん(当時30代)

今回受けた検査はどんな検査でしたか?

NIPT基本検査(13.18.21染色体、性染色体)

なぜ出生前診断を受けようと思ったのですか?

妊娠時30歳を超えており、高齢出産のリスクを鑑みたときに、妊娠の早い段階で検査を受けることで安心して出産に臨みたいと思ったから。

以前からNIPT(新型出生前診断)のことはご存じでしたか?

何となくは知っていた。

実際に受けてみて感じたことを教えてください

予想していた以上にNIPTを受ける妊婦さんがいたこと。待合室が常に混雑していたことに驚いた。また検査は採血だけなので、体に負担をかけることなく結果が出るのはありがたいと思った。採血一本でわかる画期的な検査だが、結果をどう受け止めるか、結果への覚悟をしっかり理解し、安易な気持ちで受けてはいけないと感じた。

次のお子さんを妊娠したときも出生前診断を受けたいと思いますか?

年齢を重ねるにつれ、染色体異常のリスクが高まるため、必ず受けたい。

※記載の体験談は個人の感想でございます

NIPTが受けられるクリニック紹介

ここまで出生前診断やNIPTの特徴について詳しく見た上で、検査や疾患について正しく理解することや、遺伝カウンセリングの重要性について触れてきました。
それを踏まえて、ここではNIPTが受けられるおすすめのクリニックをご紹介します。

八重洲セムクリニックNIPT検査の老舗クリニック

八重洲セムクリニックフロント
八重洲セムクリニック待合室
八重洲セムクリニック診察室
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日本で初めて年齢制限のないNIPTを始めた奥野幸彦医師(産婦人科医)のクリニックです。東京駅(八重洲口)徒歩5分の立地で東北や九州など遠方から来院する妊婦さんもいらっしゃいます。
また、検査を受けた際の安心感からリピーターの受検者が多いのも特徴です。

検査ではカウンセリング累計10,000件以上、出生前診断歴45年の奥野医師が丁寧に説明を行います。
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