管理栄養士と先輩ママによる
はじめての離乳食

子育て

前職では保育園に6年勤務し、たくさんのお子さんに離乳食を作ってきたBELTA専属の管理栄養士鳴海より、はじめての離乳食についてお話させて頂きました。
本レポートではイベントでお話した内容を抜粋して、イベントの内容をご紹介します。

登壇者紹介

上条厚子先生
BELTA専属 管理栄養士
BELTA専属 管理栄養士
鳴海 菜々恵
BELTA商品の監修を行うほか、お客様への食生活のアドバイスを行う。前職は保育園の管理栄養士。お子様のお食事まで幅広くサポートしている。

BELTA商品の監修を行うほか、お客様への食生活のアドバイスを行う。前職は保育園の管理栄養士。お子様のお食事まで幅広くサポートしている。

離乳とは?

離乳とは、母乳やミルクなどの乳汁から補いきれなくなった栄養を、食事で摂取できるように移行する過程のことです。乳汁栄養をやめることと勘違いされる方もいるのですが、乳汁栄養をやめることは卒乳や断乳と言います。
赤ちゃんは成長とともに必要とするエネルギーが増えてきます。生後5ヶ月〜6ヶ月頃から母乳やミルクだけではエネルギーが足りなくなってくるため、大体6ヶ月頃には始められると良いと言われています。

離乳食の開始

離乳食を開始する目安は生後5ヶ月〜6ヶ月です。首がすわって寝返りができる、5秒以上座ることができる、スプーンなどを口に入れても舌でスプーンを押し出すことが少なくなる、食べ物に興味を示す、などが開始の目安になります。大体生後5ヶ月〜7ヶ月ごろに反射反応が少なくなり、スプーンを受け入れるようになってきます。
またこの頃から他の人が食事をしているのを見て、食べ物を目で追っていたり、手を口に運ぶなど食べたそうにする姿が見られるようになってきます。これらを踏まえて時期としては5ヶ月〜6ヶ月の60日の間にスタートするのが望ましいです。

目安の次に大切なポイントは家族全員の体調が良いことと、病院に通える日時に開始することです。平日の午前中でしたら通院することができ、食物アレルギーが起きてしまった場合など万が一のことがあってもその日のうちに受診ができるので、安心して離乳食デビューをすることができます。

離乳食で摂りたい栄養素

先ほどもお伝えしましたが、赤ちゃんは成長に伴い生後5ヶ月〜6ヶ月頃から母乳やミルクだけではエネルギーが足りなくなってきます。また母乳やミルクでの授乳だけだと、エネルギー以外に鉄、ビタミンDも不足してしまいます。
これらを補うために離乳食を開始し、食事から栄養を摂る練習をしていきましょう。

離乳食で摂りたい栄養素1つ目はエネルギーです。
エネルギーは米、パン、うどん、そうめんなどの主食となる食材から得られます。与える際はお粥やパン粥など赤ちゃんが食べられるようにやわらかく煮て、なめらかにしましょう。
パン粥を作る場合は固い耳の部分は使わず、中の柔らかい部分を使用してください。また、バターなどが入ったリッチなパンではなく、通常の食パンを使用しましょう。

離乳食で摂りたい栄養素2つ目は鉄です。
母乳育児の場合は鉄不足になりやすいので、特に気をつけてあげたい栄養素です。
ヘム鉄は肉や魚に、非ヘム鉄は卵や納豆、小松菜などの野菜に含まれています。非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収が悪いのですが、卵や納豆のように少量でも鉄が多く摂れる食材があります。赤ちゃんは一度にたくさんの量を食べられるわけではないので、鉄の吸収を良くしてくれるビタミンCと一緒に食べられると良いですね。

ちなみに鉄の吸収を良くしてくれるビタミンCですが、ブロッコリーやりんご、じゃがいもといった野菜や果物、芋類に含まれます。ビタミンCは流出しやすい栄養素ですが、芋類に含まれるビタミンCは流出しにくいので優秀な食材の一つです。
また、乳児用ミルクにも鉄が含まれているので、料理にも使うことができます。
鉄は不足すると貧血になってしまうので、しっかり食べさせてあげましょう。

離乳食で摂りたい栄養素3つ目はビタミンDです。
ビタミンDはしらす、卵黄、鮭に多く含まれています。不足すると脊髄や足が曲がってしまうくる病になるリスクが高まります。
ビタミンD不足の原因として、外出の自粛や日焼け止めの塗布での日光照射不足が挙げられます。紫外線はガラスや布を通さず、肌で生成されるビタミンDを阻害してしまいます。健康な成長のためにも、1日少なくとも10分は太陽の光を浴びるのがおすすめです。ビタミンDは食事だけではなく、生活改善でも作ることができます。天気の良い日は親子でお散歩に出かけたり、窓を開けて手のひらを太陽に翳したり、日当たりの良いところで日光浴をさせてあげましょう。外出の際は衣類の調整や水分補給も必ずしましょう。

食事の姿勢

次に、離乳食開始の前に思わぬ落とし穴。食事の姿勢についてお話しします。
赤ちゃんは目に見えるもの、聞こえる音、触れるものなど全てが新鮮で興味津々です。テレビをつけていたり、音楽をかけていたり、手に届くところにおもちゃがある、そんな環境だと食事に集中できません。食事に集中できる環境づくりをしましょう。
椅子は足が浮いてしまうものよりも、できればベビーチェアに座らせ、足が床につく姿勢が望ましいです。足がつかない時はクッションや雑誌などを置いて、安定させてあげましょう。集中できたり、しっかり噛んで食べる力が身に付きます。

食事の量

離乳食初期は様子を見ながら1日1回、1さじから与えましょう。1さじとは小さじ1くらいの量です。離乳食スプーンで3口分くらいになります。
下唇にスプーンをつけ、口が開いたら上唇が閉じるのを待ってスプーンを水平に引き抜きます。通常の丸いスプーンで1さじ入れると量が多く、一気に喉に流れて詰まる原因となってしまうので注意しましょう。
口に離乳食が入ったら、もぐもぐと様子を見せてすぐに真似をさせたり、実際に一緒に食事をすることも目で見て覚えるのでぜひ実践しましょう。親子のコミュニケーションにもなります。初めはお粥を1さじ、次は2さじと少しずつ増やしていきます。

はじめての食材選び

どの食材も初めて食べるものになるので、1品ずつ食べられるものを増やしながら主食、副菜、主菜の順で進めていきます。
主食はエネルギー源となるお粥や半粥、うどんなどです。副菜はビタミン、ミネラル源となる野菜や果物、主菜はタンパク質源となる白身魚や豆腐です。それぞれ一週間ほど試して、慣れてきたら主食に副菜を追加。さらに慣れてきたら主菜を追加するという形で、約1ヶ月かけてタンパク質まで食べられるように進めていきます。

まず初めは10倍粥からスタートします。10倍粥の材料はお米1に対して水10になります。10倍粥を作るときは大人用の炊飯器を用意し、耐熱カップにお粥用の米と水を入れ、炊飯窯の中央に耐熱カップを沈めて大人のご飯と一緒に炊飯すると楽チンです。
米ではなくご飯から作る場合の分量は、ご飯1に対して水が5になります。鍋で加熱するか電子レンジでご飯が柔らかく、潰れるまで加熱しましょう。 電子レンジの場合は、小さじ1のご飯で約1分。卵ぐらいの量、約50gのご飯で約10分。電子レンジから取り出したら5分ほど蒸らしましょう。
初期は滑らかにすりつぶした状態で与えます。お茶碗くらいのミニサイズのすり鉢や裏ごし器が便利です。とろみの目安としてはヨーグルトやポタージュぐらいのとろみになるとOKです。

さて、10倍粥に慣れてきたら副菜となる野菜や果物に挑戦です。野菜や果物はビタミン、ミネラル源になります。初めての離乳食である初期はまだ消化器官も完全ではないので、繊維質ではない野菜を選びましょう。初期におすすめの野菜は、にんじん、玉ねぎ、カボチャ、キャベツ、ほうれん草、ブロッコリー、トマト、カボチャ、りんご、バナナなどです。お粥を5日ほど食べて慣れてきたら野菜や果物を一種類ずつ試していきましょう。年中スーパーで買える日常的な食材が多いことがわかるかと思います。
柔らかく煮てすりつぶし、茹で汁で伸ばし、ポタージュ状に仕上げましょう。一品ずつ増やし2〜3種類食べられるようになってきたら次の段階に進みます。

いよいよ主菜の登場です。タンパク質源となる白身魚や豆腐などです。離乳食開始後、大体2~3週間が目安です。お粥、野菜、タンパク質と一週間ずつ段階を踏む間隔で良いかと思います。もちろんお子さんのペースに合わせて、もう少し早くてもゆっくりでも問題ないです。
初期のタンパク質は豆腐、しらす、カレイ、ひらめ、鯛です。白身魚でも鱈はアレルギーを引き起こす場合があるので、初期のうちは控えましょう。野菜同様に柔らかく煮て、すりつぶし、茹で汁で伸ばし、ポタージュ状に仕上げましょう。
離乳食を始めて大体1ヶ月ほど経ったら鶏ささみでお肉をあげましょう。

ここで、たまごについて少しお話しします。
以前までは卵は中期以降と言われていましたが、現在は初期に卵黄からはじめていくとされています。卵黄は鉄分豊富かつ母乳に不足するビタミンDも含まれますので、初期から食べられると栄養的にも良いです。
卵はアレルギーがあるかもとなかなか与えない方もいますが、授乳・離乳の支援ガイドによると食物アレルギーの発症を心配して離乳の開始や、特定の食物の摂取開始を遅らせても食物アレルギーの予防効果がある科学的根拠はないと明記してあります。段階をゆっくりにするとアレルギー耐性がつくわけではなく、逆にリスクが高まるものもあります。また、アレルギーを心配しすぎて低栄養になることもあります。ゆっくり開始するにしても、卵は遅くとも一歳までには食べさせてあげましょう。
卵白はアレルギーが多いので混ざらないように、卵は20分茹でた固茹での黄身からスタートしましょう。離乳食後期までには全卵にチャレンジできると良いですね。心配な時は、万が一症状が出ても安心できるように、平日の日中に食べさせましょう。

離乳食の心得

さて、量と食材がわかったところで、いよいよ離乳食開始準備が完了です。
始めていくと「せっかく作ったのに食べてくれない」と不安になる方が多いです。せっかく用意しても食べてくれないとがっかりしたり、焦ってしまったりしますよね。ネットや育児書で何をどれくらいと書いているので強迫観念に駆られたり、不安が増長する方がとても多く、離乳食の苦手意識の原因の一つになっています。レシピ集など見栄えも良く、ちょっと背伸びしたものが多かったりしますよね。
でも、普段の食事も手の込んだレシピは日常使いよりも時間に余裕があったり、ちょっと特別な日に参考にすることの方が多くないでしょうか。離乳食だけ特別こだわって作らないと、と思わなくても大丈夫です。

今、皆さんの目の前に見たことも聞いたこともない、味の想像もつかない食材をいきなり口元に持ってこられたらどんな気持ちになりますか。怖いと思う方が多いのではないでしょうか。食べたこともない未知の食材を迷わずに食べられる人だけではないかと思います。
赤ちゃんはまだ、生まれて数ヶ月しか経っていないのに、毎日それの繰り返しをしていてとっても頑張っています。興味を上回る拒否反応を示しても、しょうがないなぁと認めてあげてください。
離乳食でしっかり栄養を摂取しよう、という気持ちではなくこの世界にはいろんな食材があるんだよ紹介するね、と笑顔で楽しそうに食事の時間を過ごすことが大切です。美味しいね、たくさん食べたね、などの声かけをたくさんして食事の時間を楽しいものにしてあげてほしいです。 生まれた時の体重や身長、体力など十人十色で全く同じ子なんて一人もいません。焦ってしまう気持ちもわかるのですが、そのうち絶対食べる日が来るので無理して食べさせなくても大丈夫です。少し肩の力を抜いてみてくださいね。