ママになると虫歯になりやすい?
正しいお口のケア

フェムケア

株式会社オーラルケアの歯科衛生士 佐藤静子様ご登壇いただき、「妊娠すると虫歯になりやすいの?」「妊娠するとなんで歯科検診を勧められるの?」などお口のケアについてお話いただきました。
本レポートでは当日お話いただいた内容を抜粋してご紹介します。

登壇者紹介

株式会社オーラルケア 歯科衛生士
株式会社オーラルケア 歯科衛生士
佐藤 静子
歯科衛生士専門学校を卒業後、歯科医院勤務を経て株式会社オーラルケアに入社。
予防歯科の世界的権威 スウェーデンのアクセルソン博士が考案した予防歯科メソッドを習得し、日本への予防普及活動を行っています。3年前から子どもや子どもを持つ女性がこれから先の輝かしい未来をつくるための口の健康づくりに特化して、簡単に実践しやすい予防方法をお伝えしています。

歯科衛生士専門学校を卒業後、歯科医院勤務を経て株式会社オーラルケアに入社。
予防歯科の世界的権威 スウェーデンのアクセルソン博士が考案した予防歯科メソッドを習得し、日本への予防普及活動を行っています。3年前から子どもや子どもを持つ女性がこれから先の輝かしい未来をつくるための口の健康づくりに特化して、簡単に実践しやすい予防方法をお伝えしています。

妊娠中のお口のトラブルあるあるとは?

妊娠中や出産した後は体が大きく変化していきますよね。見た目だけではなく、内面もものすごく変わっていると思うのですが、その変化に伴って口もものすごく変わっています。しかも口の変化は口だけの問題ではなく、体や全身の問題につながっているということがわかっています。

今年の初めに、こんな調査結果が出ました。
妊娠期間中の歯科に関するデータなのですが、妊娠中に歯科検診や歯科医へ通院しましたか?という質問に対し、通院した方が39%、通院しなかった方が50%、憶えていないと答えた方が12%という回答でした。
妊娠の検診は母子の健康のために行われていますが、その中に体だけではなく口(歯科)が入っていることに対し不思議だと言う妊婦さんがいらっしゃいました。
確かに眼科や耳鼻科などは妊娠検査に入っていないですよね。ではなぜ歯科だけ入っているのでしょうか。それは、妊娠から出産まで口が健康でいることが非常に重要だからです。

口が母子の健康にどのくらい関係していて大切なのかお伝えする前に、まずは皆さんにお口のセルフチェックをしていただきたいと思います。
妊娠する前と妊娠中、出産後ではお口の変化が起きていると思いますが、当てはまるものがないかチェックしてみてください。

食べ物の好みが変わったり、食事時間が不規則になったり、口やのどが乾くなど起きたりしていませんか?
上記に当てはまると、ママが虫歯になりやすくなる、ということを聞いたことある方も多いのではないでしょうか。それ以外にも、生まれた赤ちゃんへの虫歯菌の感染がしやすくなるということがあります。

ではこちらはどうでしょうか。
歯を磨くと血が出る、なんだか臭うぞ、口がネバネバする、など当てはまったりしないでしょうか。これらに当てはまると何が起きるのかというと、これらの症状は歯周病の可能性があります。

日本の成人のうち8割以上の方が歯周病と言われています。
歯周病に対してどんなイメージを持っていますか。歯が抜け落ちるというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
実は歯周病の初期は歯茎の炎症、腫れるところからはじまっていきます。歯茎が腫れてたまに血が出るということがあれば、これも立派な歯周病です。
妊娠中は赤ちゃんを守るために体の免疫力が低下しているというのはご存知の方も多いと思いますが、それに加えて実は歯周病菌は女性ホルモンが大好物です。なので妊娠中に、すでに歯周病になっている人は炎症が進みやすくなります。そして健康な歯茎の人も妊娠中は歯周病にかかりやすいと言われています。
もし歯周病になってしまって、炎症が長引くと早産や低体重児出産のリスクに繋がっていくわけです。

お口の中の細菌が多かったり、歯周病があると実はいろんな病気のリスクを上げることにも繋がります。実はこうしたリスクを下げて健康に年を重ねていく方法があるんです。

出産前からはじめるとお得!ママも子どももラクするお口ケア

なんで出産前からケアをした方が良いかというと、ママのお口が健康になり、ずっと元気な状態で過ごせる。そしてお子さんも元気な状態で出産できる、こうした可能性を上げることにつながります。
また、妊娠中にやっておくことによってお子さんを出産した時の虫歯予防の手数も減るんです。ママがお口の健康づくりを知っておくとそれを未来のお子さんに伝えることができるんです。つまりお子さんの未来の健康をママが作ることができるんです。お子さんがずっと健康でいられれば、お子さんの将来の可能性にも繋げられるのではないでしょうか。

では、お口をケアする際にここからはじめると良いよ、簡単にできるよというポイントを2つお話しします。
まず一つ目は【細菌を弱らせる】こと、そして二つ目は【大事なとこだけ細菌をトル】ということです。

①細菌を弱らせる

細菌を弱らせるってどういうこと?と思いますよね。
そもそもお口の中には細菌がたくさんいます。細菌が0という人はいません。
お口の中の病気である虫歯、歯周病は全て細菌による感染症です。具体的には、ある時期に細菌がお口の中に感染してきて、時を見て発症するという病気なんです。
口の中で悪さをする細菌は虫歯だとミュータンス菌、歯周病菌だとジンジバリス菌が代表的なものです。この細菌はヒトからヒトへ感染すると言われています。

虫歯菌の感染が一番しやすい時期は1歳7ヶ月〜2歳7ヶ月。そして歯周病菌は18歳頃に感染すると言われています。
出産後、「虫歯予防として箸やスプーンの共有をしてはいけません」「キスなどのスキンシップはできるだけ控えてください」と見たり聞いたことがある方もいると思いますが、それは感染を防ぐために言われています。では感染するとどうなるのでしょうか。

実は感染してもすぐに虫歯になるというわけではなく、まず歯に細菌がくっつくところから始まっていきます。最初に歯にくっついてくるのは虫歯菌などのミュータンス菌です。

このミュータンス菌がお砂糖などを餌にして、ネバネバした不溶性グルカンという粘着力があるものを作っていきます。このネバネバは中で歯を溶かすほどの酸を作り出していき、これを放置し続けると虫歯になります。実は一番厄介なのはこのネバネバなんです。これがあることによって、ネバネバを足がかりにしていろんな細菌たちを寄せ付けていき、細菌を増やしていくことに繋がっていきます。
この細菌たちを二日以上放置しておくと、歯周病菌が増えてきます。

このようにして虫歯や歯周病が発症するよう細菌たちが活動していくわけですが、ここで考えてみてください。最初に歯にくっつく細菌を弱らせることができたらどうなると思いますか。弱らせることができれば、こうした悪さをする細菌の塊ができにくくなります。
しかし、そんな魔法のようなことができるのかと思いますよね。しかも安全に使えるものがあるんです。

最初にくっつく菌。つまり虫歯菌のミュータンス菌を弱らせていくことができるものは、キシリトールという甘味料です。
キシリトールは歯にべったりとくっつく悪玉ミュータンス菌を減らしてくれる魔法のような甘味料なんです。しかもお砂糖のように甘いのに、ミュータンス菌が酸を作ることができませんし、プラークの元となるネバネバを作ることもできません。
カロリーもお砂糖より少し低いので妊娠されている方やダイエットされている方にも良いと思います。さらにキシリトールを活用すれば歯磨きで汚れを簡単に落とすことができるようになるんです。

キシリトールを使うとさっぱりしてきた、歯がツルツルしている、歯磨きがラクになってきた、などの変化を感じる方が多いです。
歯の予防をするためには歯磨きをしなければならないと思っている方も多いと思います。しかし、こうした甘味料を使った口内ケアも予防の方法の一つで、予防の先進国の北欧では何十年もお口ケアに活用されているものです。

このキシリトールを使った予防はママだけの虫歯予防ではなく、お子さんの虫歯予防にも役立ちます。

虫歯予防はお子さんが生まれてから何歳ではじめるイメージがありますか。歯が生えてきてからと思う方も多いかもしれませんが、実はお子さんがお腹の中にいるときにママがはじめることが一番予防効果が高い方法です。
ママが妊娠中にキシリトールを食べると、産後、食器などの共有や少しのスキンシップでは子供に虫歯菌の感染がしにくいことがわかっています。

上図を見ると、キシリトールを食べていたかいないかだけで、むし歯菌の感染確率にこれほど差が出たことがわかります。黄色はキシリトールを食べていたグループ。そして緑がキシリトールを食べていないグループ。これは最小限の努力で最大限の効果がある予防方法です。食べるというだけのラクな方法で、簡単に効果的にしかも食事という安全な方法でママとお子さんの予防ができるのです。

キシリトールには色々な形態があります。
ガムやタブレット、グミや飴など色々なものがありますが、おすすめはガムです。なぜかというと、妊娠中は唾液が出ないという方も多いのですが、ガムを噛むだけで簡単に唾液を出すことができます。ミュータント菌を弱らせつつ、唾液も出す。さらには、噛むという行為はリラックス効果にもつながります。つまり一石二鳥ならぬ三鳥の価値があるので、ぜひキシリトールを活用していただけたらと思います。

②大事なところだけ細菌をトル

全部の歯を丁寧に一本一本歯磨きしなければ、と思う方も多いと思うのですが、それって結構大変ですよね。子育てしていると、なかなか自分の時間を取るのが難しいと思います。なので、時短になるけど予防効果がちゃんとある歯のケアの方法をお伝えします。

大事なとこだけとは、どこだと思いますか。
一つ目は歯と歯の間、2つ目は歯茎の中です。

歯茎の中って何?と思う方も多いと思いますが、上図の部分を指します。
実は健康な歯茎でも歯茎には溝がありまして、大体2~3mmくらい溝があると言われています。
この溝は細菌にとって非常に安全な場所です。なぜならここには歯ブラシが届かないからです。歯ブラシが届かないのでこの溝の中に細菌が留まって、たくさん栄養をもらいながら伸び伸びと生活をしているわけです。この溝の中で悪さをしていくのは、歯周病菌です。

そんな大事なところの細菌をとるために使うアイテムはフロスです。フロスは歯と歯の間と、歯茎の溝の二つの場所を一回で取ることができるアイテムです。一生懸命歯磨きをするよりもフロスでケアをする方が、歯周病菌を除去して皆さんの健康づくりにつながる方法です。
フロスは歯と歯の間と歯茎の中をお掃除していくものなので、指に巻くタイプで、歯茎に優しいフロスを選んでください。フロスを使うと、たくさん汚れがつきます。フロスで取りたいのは病気の原因になる細菌です。一度ついた細菌は洗っても、ティッシュで拭いてもなかなか綺麗にならないので、汚いフロスで別の場所をフロスしてしまうとその場所に細菌たちを移動してしまうことにもつながりますので、常に新しい部分が使える指に巻くタイプを使うのがおすすめです。

また、歯茎は皮膚よりももっと弱く、非常にデリケートな部分です。なので、歯茎に触れても痛くない糸をぜひ選んでください。

生まれてきた子の歯を守るために今からできること

お腹の中にいるときにママがキシリトールを活用すると、子供が虫歯菌が感染しにくくなる。そして子供の虫歯予防につながっていきます。将来的には歯周病予防にもつながっていきます。また、今から歯ぐきにやさしいフロスができていると、子供に仕上げフロスをするときに嫌がられません。子供の時からフロスをするという習慣もできて、年を重ねていってもお口の健康を維持できる。
それにプラスしてママには今の段階で健康な口でいるための知識をどんどん増やしていってほしいと思います。

虫歯も歯周病も本来では稀な病気で、実は海外ではスタンダードな考え方です。例えば虫歯はかかるまでに平均8年かかると言われています。1日2日でなるわけではないのです。しかも虫歯はいくつかの要素が重なってできていく病気なので、発症するまでにたくさん手当てができますし、それができれば削って詰めて歯を失うということには繋がりません。 実は虫歯予防の先進国では子供が小さい時に大切にしていることとして、お母さんが知識を持つことを大切にしています。知識を持っていれば、どんなふうにケアしたら良いのか、どんな道具を使ったら良いのか、どんな食べ物を口にして良いのかなど適切に判断できるからです。

まとめ

細菌がお口の中で増えていくと虫歯や歯周病など口だけの問題だけではなく、実は皆さんの体やお子さんへ影響が出やすいことがわかっています。
なので、簡単にできることとしてキシリトールの活用をお伝えしました。キシリトールのメリットはとにかく簡単にできる、そして美味しいということです。食べる、噛む、舐めるということだけで効果的な予防につながっていきます。
そして時間や体調に余裕があるときは歯茎に優しいフロスをやっていただきたいと思います。妊娠中、子育て中は体調がすぐれなかったり、時間が作れないことが多いと思います。できるタイミング、できる範囲でぜひケアをしてみてください。
お口のケアは1日1回細菌をとれていれば虫歯も歯周病も発症しないと言われています。なので、朝昼晩どこでも良いのでできる時にやってみてください。
本日お話ししたことは将来のお子さんを守ることの第一歩につながると思います。
産後はどうしても赤ちゃんが優先になると思いますし、ママは自分のことが後回しになると思います。そうなるとお口の不健康につながります。少し時間がある時にお伝えした方法を行っておけば、出産後も良いお口の環境を維持出来ると思いますし、ずっと親子で楽しく過ごすことにもつながると思います。
ママも健康で、お子さんの健康にもつながれば良いなと思いますので、ぜひ出来る範囲で実践してみてください。

口内ケアに関するQ&A

Q1. 1歳3ヶ月の息子の歯について上は4本生えていますが、下は真ん中2本しか生えず、最近は下の奥歯が見えてきました。下の前歯2本だけで、横の歯が生えていない場合に気をつけることはありますか?離乳食の完了も上下4本生えてからと教わり、いつか生えてくると思っていても心配です。

生え方や生えるタイミングには個人差があるので、様子を見ながら過ごしていただけたらと思います。特に気をつけることはなく、様子を見ていただけたらと思います。

Q2.子どもが歯磨きするときに歯ブラシを噛んで出血するので、このままやらせて良いのか気になっています。

歯ブラシが硬いと歯茎を傷つけてしまい、歯茎から血が出てしまったりすることがあるのでできるだけ柔らかいものが良いと思います。また、自分で磨く際には力加減を調整できますが、特にお母さんが仕上げ磨きをする際の歯ブラシはより柔らかいものを使用していただくのが良いと思います。

Q3.キシリトールはどんなものを使えば良いですか?スーパーやコンビニで売っているものでも良いのでしょうか?

キシリトールを選ぶ際は、キシリトールの入っている量が多いもの、50%以上配合のものを選んでいただくのがおすすめです。そうでないとミュータンス菌を弱らせるなどの働きが起こりにくいです。

Q4.子供に歯磨き粉を使うのはいつからが良いでしょうか?

歯磨き粉を使うタイミングは、吐き出しをできるタイミングで使ってください。歯磨きジェルやフッ素ジェルのものは吐き出しをしないので、少量使っていただくのも良いと思います。歯磨き粉はお子さんの虫歯予防をしていくのに、すごく簡単にできる有効な方法なので、ぜひ吐き出し前に使用する場合は少量を塗るぐらいの形で使っていただくのが良いです。吐き出しができる場合には適正量を使用してください。

Q5.子供にキシリトールを使うのはいつからが良いのでしょうか?

舐めて溶かすものなので、誤飲の心配もなく安心して食べれるようになる大体2歳くらいから使用してください。タブレット型のものなども2歳くらいから推奨されています。
小さい頃からキシリトールをあげたいという方は、タブレットを砕いてあげるのも良いと思います。

Q6.フロスは朝昼晩と歯磨きするたび、毎回するべきでしょうか?

最低でも1日1回行えば、歯周病菌が増えにくい環境を作ることができます。歯周病菌をいかに増やさないかということが非常に重要です。歯周病菌が増えはじめるタイミングは大体48時間以降です。つまり2日以内にやっておけば、歯周病菌が増えずお口の中の良い環境を作っていけるので、1日1回で十分だと思います。

Q7.フロスは子供にも使った方が良いでしょうか?

ぜひフロスはお子さんも使ってください。歯と歯がくっついている場所に使っていただくと良いです。特に奥歯や前歯は歯と歯の間がくっついているので、この辺りを重点的にフロスをはじめてください。

Q8.歯医者にいくと歯を磨きすぎだと言われます。このままだと歯茎が下がってしまうと言われましたが歯のざらつきが気になります。磨き方の工夫はありますか?

歯茎はデリケートなので、ガシガシやってしまったり、硬い歯ブラシを使ってしまうと歯茎が下がりやすくなってしまいます。できるだけ歯茎にダメージがないように歯ブラシを使ってください。気になる場所にはピンポイントに当たる歯ブラシがおすすめです。タフトブラシという小さい束の歯ブラシを使うと、歯茎を守りながら汚れを落とせるのでおすすめです。

BELTAでは、ライフステージの変化によって生まれる不安や疑問を笑顔に変えられるように、資格を持った専門家やプロフェッショナルが実施したイベントをレポートとしてお届けしています。本日共有した内容が、皆様の参考になれば幸いです。