
知るだけでなくまず行動を
1回の婦人科受診が
今も未来も守る
医療法人社団杉四会 理事長
杉山産婦人科 院長
杉山力一先生



BELTA
と
不妊治療専門医
杉山先生と
対談させていただきました!
杉山産婦人科グループの理事長として最先端の生殖医療を提供し、多くの患者のサポートに尽力している杉山先生。その中で感じる10代、20代から婦人科に行くことの重要性や、具体的な検診の内容についてお話ししました。


プレコンセプションケアに対する
専門医の想い
早期の婦人科受診は将来の
不妊症予防に有益


早期の婦人科受診は
将来の不妊症予防に有益
プレコンセプションケア=受胎前・妊娠前のケアと言われていますが、これは誰に必要な考え方ですか?
将来自分が妊娠出産する時に向けた啓発と考えると、主に行動を起こしてほしいのは20代の方です。まずは、1回で良いので20代になったら婦人科に行くことをお勧めします。
もちろん、生理が全く来ない方や、生理が約28〜30日周期で来ない方は、年齢関係なく疾患を抱えている可能性があるので、早めに受診した方が良いです。
一方で、症状がない人の中にも基礎的な疾患を抱えていたり、卵子の在庫が少ない状態の方もいます。
疾患を早めに見つけることができれば、治療をしたり進行を止めることができます。あとは、卵子の在庫が少ないとわかれば、卵子凍結を検討したり、その後のライフプランを考える上で役立てることができます。早めに婦人科を受診することは、将来の不妊症の予防に間違いなく有益です。
「まずは1回」婦人科を受診した後は、どれくらいの間隔で受診に行くのが良いですか?
これは年齢にもよりますが、約2年ごとで問題ありません。
例えば、受診時に子宮筋腫がなければ、そこから2年以内に子宮筋腫ができることはほとんどありません。その後5年かけてできたとしても、数年以内にもう一度婦人科を受診していれば手遅れにはなりません。
ただ、一度受診された方は、そこから知識を得られ、ご自身で定期的に受診される方が多い印象です。

早期検査に2〜3万円かけるか
将来の治療
にコストをかけるか


早期検査に2〜3万円かけるか
将来の治療にコストをかけるか
プレコンセプションケアの目的で婦人科に行くと、具体的にはどのような検査を受けることになりますか?検査内容や金額面も気になります。
私はAMH検査・クラミジアなどの感染症検査・超音波検査は最低限受けることをお勧めしています。
AMH検査・感染症検査は血液検査です。AMH検査は、卵子がどれくらい残っているかを知ることができます。妊娠するためには必ず卵子が必要ですが、20代の段階で卵子の在庫が少ない方もいます。
超音波検査は内診(経腟エコー)です。経腟エコーでは、卵巣や子宮の状態を調べます。婦人科に慣れていない患者様の中には、内診に抵抗を感じる方もいますが、その場合はその旨を伝えていただいて大丈夫です。

内診を受けずに検査をすることは可能なのですか?
代わりに腹部エコー検査を行うことが可能です。ただ、経腟エコーと比較すると、腹部エコーでは細かい部分を調べることができないため、検査の精度は半分ほどになってしまいます。経腟エコーの方が、卵巣が詳しく見えるんですよね。
どうしても内診台に上がりたくないという場合は、その旨を伝えていただくこともできます。
患者様の中には「女性の医師に診てほしい」などの希望を伝えられる場合もありますよ。
検査費用はどれくらいかかるのでしょうか?
検査内容にもよりますが、自費診療の場合、2〜3万円程度かかります。ただ、最近では自治体によっては条件を満たせば補助金が出る場合も増えてきています。
金額的にハードルが高い場合は、検査項目を絞って、まずはAMH検査を受ける(1万円ほど)のでも良いでしょう。
ただし、疾患を早期発見できずに将来治療に高額な費用がかかる可能性を考えると、20代のうちに検査にお金をかけることは「もったいないこと」ではないと思います。
生理がきている・健康体
=妊娠可能は間違い


生理がきている・健康体=妊娠可能は
間違い
プレコン検診や不妊治療など様々な患者様を診る中で、「重要だけど知らない人が多い」と思う知識はありますか?
最近では減ってきたように思いますが、「加齢と共に妊娠しづらくなってくる」意識を持っていない方や「生理が来ていれば、妊娠できる」と思っている方もいます。
実際には、年齢を重ねると卵巣機能が低下し、卵子の数や質も落ちてきます。つまり、生理が来ていても、年齢とともに妊娠率は低下していくのです。
また「健康体だから子どもができやすい体質だ」「病気をしたことがないから、自分は不妊ではない」と思い込んでいる方もいます。
しかし、卵巣や卵子の質は、今の自分の健康状態とは関係ありません。つまり健康体=妊娠しやすいというのは、正しい知識ではないのです。

早期からの検査や適切なケアを行わなかった結果、「手遅れ」や「もっと早くに妊娠できたかも」という患者様はいらっしゃいますか?
たくさんいらっしゃいます。
気づいたときには「妊娠しづらくなっていた」、または20代でもいざ妊活を始めようとしたら「卵子の在庫がほとんどなかった」というケースもあります。
20代で不妊に悩む方もいるのですね?
はい、います。20代でも生理不順を放置していた結果排卵していなかった方や、子宮内膜症やクラミジア内膜症の基礎疾患を持ち不妊で受診される方もいらっしゃいます。
また、20代で不妊に悩まれる方は、男性不妊が原因のケースも多いです。
20代から「知る」だけでなく
「行動する」
ことの重要性


20代から「知る」だけでなく
行動することの重要性
プレコンセプションケア啓発の課題は何だと感じていますか?
私は、中学や高校の授業で、プレコンセプションケアに関わる知識が十分に伝えられていないことが課題だと感じています。
「卵子と精子の受精の仕組み」だけでなく、年齢と妊娠率の関係などについても伝えるべきだと思います。
あとは、血液検査で卵子の在庫数がわかることや、婦人科を受診する意味についても知っておいてほしいです。知識や情報を得ても「行動する」ことが伴わなければ、プレコンセプションケアにはなりません。
いくら知識を持っていても、自分の現在の状態や疾患の有無は、実際に婦人科を受診しなければわかりませんからね。
将来、妊娠・出産を考えている方に向けてメッセージはありますか?
繰り返しになりますが、まずは一度婦人科を受診してみましょう。
検査を受けて何もなければ安心して過ごせますし、もし疾患が見つかった場合も、早めに治療を始めたり、将来について考えるきっかけにすることができます。
皆さんが年に1回健康診断を受けているのと同様、20代になったら婦人科を受診してみましょう。






PROFILE
杉山力一
医療法人社団杉四会 理事長
杉山産婦人科院長
東京医科大学を卒業後、同大学の産婦人科学教室に在籍し、不妊治療や体外受精の研究に従事。
その後、北九州のセントマザー産婦人科にて国内留学し体外受精について学び、2001年に70年以上の歴史を持つ杉山産婦人科に併設する形で不妊治療専門の杉山レディスクリニックを開院する。
2007年には、分娩、生殖医療、内視鏡手術を行う総合施設として杉山産婦人科世田谷院を開院し、2011年には杉山産婦人科丸の内を、2028年には杉山産婦人科新宿を開院。
現在は、杉山産婦人科グループの理事長として最先端の生殖医療を提供し、多くの患者のサポートに尽力している。
杉山産婦人科医院:
https://www.sugiyama.or.jp/