高齢出産は何歳から?知っておくべきリスクと対策を医師が監修
女性の社会的活躍が目覚ましい現代において、晩婚化・晩産化が進んでいます。「仕事がひと段落したら子どもが欲しい」と考えられている方も少なくないのではないでしょうか?
しかし、妊娠適齢期と呼ばれる時期があり、その時期が過ぎると出産による様々なリスクが起こる確率が高まってしまいます。
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医師が監修
あゆみレディースクリニック高田馬場院長
佐藤 歩美
(さとう あゆみ)
■ 職歴
横浜市立大学医学部 卒業
NTT東日本関東病院 勤務
総合母子保健センター 愛育病院 勤務
ベビースマイルレディースクリニック有明 副院長
あゆみレディースクリニック高田馬場 院長
https://ayumi-ladies.com/
35歳を過ぎたら高齢出産
日本産科婦人科学会は、満35歳を超えての初産婦を“高年初産”と定義し、一般に35歳を超えて出産することを高齢出産と言います。
1991年より前、高齢出産は30歳以上とされていました。
しかし、1980年代から90年代にかけて、出産の高齢化が進んだことにより、2000年以降、30歳以上で初めて出産する人の割合が1割を超えるなど晩産化がすすみました。
そして、WHO(世界保健機関)をはじめとする他の国々でも同じように定義されていることから、35歳に引き上げられた結果、35歳以上で初めて出産することを指し、近年では一般的になっています。
二人目以降の出産が必ず高齢出産に該当するわけではないものの、年齢が高くなることで出産のリスクが増加することに変わりはありません。
近年の高齢出産の現状
第1子を出産したときの母の平均年齢の推移をみると、1975(昭和50)年の25.7歳から2021(令和3)年には30.9歳と、5.2歳増加しており年々高まっています。
さらに、年齢別の出生率を見てみると、20代の出生率は低下しています。一方、30代の出生数は徐々に増えています。また、医学的には、30代後半から出産に伴うリスクが増加すると言われていますが、35歳から39歳の間の出生数も増加傾向にあります。
※参考:政府統計の総合窓口
高齢出産増加の背景として、近年、女性の高学歴化・就職率の増加に伴う結婚年齢の上昇や、年齢が高くなるにつれて自然妊娠の確率が低くなるため、結果的に生殖補助医療(人工授精、体外受精など)が発達し、それに伴って高齢妊娠が増加していることが要因となっています。
高齢出産のリスク
「高齢出産はリスクが高い」というイメージを持たれている方も多いかと思いますが、実際はどのようなリスクが起こる確率が高まるのでしょうか?
日本産婦人科医会が発表している調査データを元に高齢出産のリスクを紹介します。
早産・流産する確率が上がる
早産とは、妊娠37週0日未満で出産することで、高齢出産の人ほど、増加する傾向があります。増加する要因として、高齢になるにつれて子宮筋収縮力が低下や、合併症(慢性高血圧合併妊娠、糖尿病合併妊娠、子宮筋腫合併妊娠など)のリスクが高いため、母体適応が難しくなり早産しなければならない状況を余儀なくされるため、結果として早産のリスクが高くなります。
流産とは、妊娠22週未満に何らかの理由で赤ちゃんが亡くなり、妊娠が続けられなくなることをいい、年齢を重ねるにつれて流産する確率も高まってきます。
米国による研究では、35歳未満の妊婦と35歳から40歳未満の妊婦と比較すると、流産率が2倍となっており、40歳を超えると2.4倍になるという結果になっています。 流産になる原因は様々ですが、その多くは受精卵の染色体異常によるものと言われています。
※参考:秋田県産産婦人科医会
※参考:高齢妊娠に伴う諸問題
難産になりやすい
高齢出産になるほど、分娩誘発の頻度、遷延分娩や分娩停止のリスクが増加します。
また、産道や子宮口が硬くなることで、子宮筋収縮力が低下し、通常よりも弱く、間隔の長い微弱陣痛が起こりやすいと言われています。
そのため、帝王切開になる確率が高くなる傾向があります。
ダウン症など染色体異常のリスクが上がる
ダウン症とは、21番染色体が通常より余分に複製されることで発生する染色体異常のことで、高齢出産はその染色体異常を持った赤ちゃんが生まれる確率が上がると言われています。その中でも一番多いのがダウン症です。25歳頃のダウン症の出産率は1250人に1人という割合ですが、40歳になると106人に1人という割合になってきます。
病気になるリスクが上がる
妊婦さん自身が気を付けたいのが、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった病気です。
妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に何らかの理由で高血圧を発症することを指します。
自覚症状が現れるケースはごく稀で、初めて妊娠検診を受けた時に、診断を受けるケースが少なくありません。また、妊娠34週未満で発症すると重症化しやすく、母体の血管や臓器への負担が大きくなるだけでなく、蛋白尿、痙攣発作を起こすことがあります。
妊娠糖尿病は妊娠をキッカケに糖尿病のような症状が発症する病気です。母体が高血糖になることで同時にお腹の中の赤ちゃんも高血糖になってしまい、様々な合併症が起こる可能性があります。
※参考:妊娠糖尿病(日本産婦人科学会)
高齢出産のメリット
高齢出産は、リスクがピックアップされますが、メリットになることも多々あります。
- ・経済的余裕
- ・精神的なゆとり
- ・仕事のキャリアを積める
などがありますが、そのほかにもメリットがあります。
高齢出産は長生きする確率が上がる
米国で100歳以上の方を対象にした研究によると、高齢出産した女性は若くして最後の子供を産んだ女性と比べて、95歳まで生きる確率が2倍であることが示されています。
※参考:Extended Maternal Age at Birth of Last Child and Women’s Longevity in the Long Life Family Study
高齢出産と脳のはたらく力
米国のJournal of the American Geriatrics Societyに掲載された研究では、830人の中年女性を対象に、高齢出産と脳のはたらく力に相関があるかどうか調べています。その結果で、高齢出産をした群は、そうでない群と比較し、閉経後により高い認知能力や言語記憶力を持っている可能性が示唆されました。
高齢出産体験談
実際に高齢出産を経験したベルタ社員のHさん、Yさんにお話を伺いました。
妊娠時に高齢出産に対して抱えていた不安はありましたか?
- Hさん
- 35歳で妊娠、出産したんですけど、ざっくりとリスクが上がるっていうのはわかっていたので、ちょっと調べたりしてたかな。
- Yさん
- 様々なリスクが上がるので、出生前診断しようか迷った。
- Hさん
-
そうですね。周りからもリスクについて聞かされていたし、診断を受けた友達もいましたね。
でも、リスクを知ってめちゃくちゃ不安に感じるっていうよりかは、知っておこうぐらい。
ただ、体力的な不安はあった!
- 質問者
- それは、出産時の体力ですか?
- Hさん
- 全部!産後の体力の回復もそうだけど、その後のイベント(運動会とか)の疲れ具合が違うと聞かされていたので、不安はあった。
- Yさん
私は、高齢出産に伴う、高血圧、糖尿、他の付随するリスクの方が不安だった。
元々、高血圧で高齢出産だから絶対に帝王切開って思ってた。実際そうじゃなかったんだけどw
高齢出産をするにあたって病院選びはどうされましたか?
- Yさん
- 私は高齢出産、高血圧、子宮筋腫の3拍子そろってリスキーだったので、何かあった時のためにクリニックではなく、対応できる総合病院を選んだ。
- Hさん
- 私も最初は綺麗だし、ご飯も美味しいし、個室だし、クリニックがいいと思ってたけど、いろんなことを考えた時に、総合病院にした!
高齢出産を迎えるにあたって行った対策は?
- Hさん
- 出産に向けてとにかく歩いてた!体力的なとこもそうだけど、妊娠糖尿病になってしまったから。食後1時間後くらいに血糖値が上がるので、それを抑えるために歩いたりとか。
- Hさん
- 後は、食事をほんとに意識して、 米、味噌汁、魚、納豆みたいな健康的な食生活をしていた!!
妊娠時・出産時・産後、大変だったことは?
- Yさん
- 妊娠23週目くらいの時に、会社に行こうとしたら急にお腹が痛くなっちゃって、病院に鎮静剤もらいに行ったんだけど、そのまま救急搬送されて切迫早産で入院になった…。その時は23週目でもう生まれちゃうのかと思った。結果、全然生まれてこなくて大丈夫だったんだけど、そこから80日間ずっと入院でそれが一番大変だったかな。
- Yさん
- いとこが40歳で初産で病院を探すのが大変だったみたい。リスクがあるからクリニックだと受け入れてくれないみたいで断られてた。
後悔していることはありますか?
- Yさん
- 切迫早産で入院が早かったから生まれてくる子の準備や、買い物が一切できなかったこと。一般的には、産休に入ってから揃えられるけど、私はとりあえず必要なものだけネットで買ったりとかしてて、 もっと色々見たかった。
高齢出産はリスクに注目しがちですが、逆に良かった点はありますか?
- Hさん
- 本当にすごい楽しい時期に、自分のためだけにお金と時間を使えたことかな
- Yさん
- 旅行とか制限されずに楽しむことができる。子どもができてから韓国に行けていない、、w
- Hさん
- 若くして結婚して子どももできていいなと当時は思っていたけれど、でも実際、じゃあ自分がって振り返った時に、今がベストだったんだなって思った!
この記事を読んでいる人に、アドバイスをお願いします!
- Hさん・Yさん
- 子どもがほしいと思っているならば絶対に早い方がいい!早いに越した事はない!
- Yさん
-
将来的に子どもを望んでいるのであれば、パートナーに結婚願望はあるのか、子どもが欲しいかどうかちゃんと確認した方がいい!!
高齢出産になると妊娠がしにくくなるから、自然妊娠したい人は、自分の状態を知るためにまずはブライダルチェックに行くのがおすすめ。排卵がいつとか検査ですぐわかるから手っ取り早い。
- Hさん・Yさん
- 男性もね!!
- Hさん
- 半分は男性が原因ですからね!
-
男性
社員 - そうですよね、、とても勉強になります!!
高齢出産にむけての準備や気をつけること
出産は、母体にとっても大きな負担がかかり、命に関わる行為です。若い人と比べて高齢出産は、全てにおいて様々なリスクが高くなります。
リスクを「ゼロ」にすることはできませんが、リスクを抑えることはできます。
そのためにもしっかりと高齢出産の準備が必要です。
自分自身の生活習慣を見直す
睡眠や食事の時間が不規則など生活のリズムが乱れていると疲れがたまりやすかったり、体調を崩す頻度が増えるだけでなく、女性ホルモンが乱れて妊娠しにくい原因にもなるため、規則正しい生活を送ることが大切です。
食生活を見直す
高齢出産には、リスクが伴うため慎重な栄養管理が必要です。
以下は特に意識して摂取したい栄養素です。高齢出産を考えている方はチェックしましょう!
- ・妊娠高血圧症候群のリスクが高いため、塩分の摂取量に注意する
- ・妊娠糖尿病のリスクが高いため、糖質の摂取量に注意する
- ・便秘になりやすいため、食物繊維を積極的に摂取する
- ・厚生労働省が推奨している葉酸、鉄分、カルシウムなどの栄養素を積極的に摂取する
また、若い頃に比べて、代謝が落ちて消費エネルギーが少なくなっているため太りやすくなります。そのため、妊娠前からBMIが25以上の「肥満」である女性の場合、普通体重だった女性と比べて妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病の発症リスクのほか、巨大児や死産になるリスクが高くなります。
逆に、妊娠前からBMIが18.5以下の痩せすぎている女性の場合、早産や胎児発育不全などのリスクが高くなります。
自身のBMI値を計算し、標準体重に近づくように食生活を見直しましょう。日本肥満学会によると、BMIが22の体重が適正体重(標準体重)とされ、統計的に最も病気になりにくいとされています。
身長
cm
体重
kg
適度な運動を心がける
出産には、時間がかかるため、体力が必要となります。若い人より体力が低下しているので、産後の回復が遅れ、子宮や体の回復が思わしくありません。日常生活の中で運動を習慣にすることが重要です。
しかし、今まで運動をしていなかった人がいきなり激しいスポーツをすることは怪我につながったり、続かない原因になります。まずは無理せず続けられるように自宅で5分間体を動かす、たくさん歩いてショッピングを楽しむなど出来る範囲から始めることをオススメします。