父親になるってどういうこと?
パートナーにしかできない身体のケア

フェムケア

NPO法人日本マタニティ整体協会理事であり助産師の種田好美様にご登壇いただき、パートナーにしかできない身体のケアについてお話いただきました。
本レポートでは当日お話いただいた内容を抜粋して、イベントをご紹介します。

登壇者紹介

NPO法人日本マタニティ整体協会理事 助産師
NPO法人日本マタニティ整体協会理事 助産師
種田 好美
助産師15年目。400人以上のお産に関わってきました。現在は行政助産師として勤務をしながら、マタニティ整体犬山店の運営や産婦人科勤務者限定 妊婦整体コースのセラピスト育成をしています。

助産師15年目。400人以上のお産に関わってきました。現在は行政助産師として勤務をしながら、マタニティ整体犬山店の運営や産婦人科勤務者限定 妊婦整体コースのセラピスト育成をしています。

父親になるってどういうこと?

当たり前ですが奥さんが妊娠をして出産をしてくれるので、男性はパパになることができるんです。
女性にしかできないことは赤ちゃんを産むこと、そして生まれた子供に母乳をあげること、それだけです。それ以外の育児はすべてパパも一緒にできるんです。おむつを変えたりとか抱っこをしたりとか、沐浴をしたりとか。

育児技術は様々な場所で身につけられる

特に初めてのお子様であれば、うまく子供のお世話ができるかなとかいろいろ不安を抱えていることだと思います。
育児技術は出産する病院とかクリニック、あとは各市町村の保健センターとかで行われているパパママ教室でも教えてもらうことができるので、ぜひそちらにもご参加いただけるとイメージがつくのではないかなと思います。

40週間は夫婦にとって大切な時間

赤ちゃんが母体で育つ40週間というのは妻や夫という立場から、赤ちゃんのお父さんお母さんに成長するために必要な準備期間になります。この貴重な期間に妊娠中や産後のこと、そして赤ちゃんとの生活のことをぜひご夫婦で話し合ってほしいです。

愛情について

この表は東レ経営研究所の研究部長さんが行った調査です。この表は女性の愛情曲線を示しています。
夫が一緒に育児をするか否かで愛情の明暗が分かれるということがこの調査で分かったようです。

青い曲線がご主人さんへの愛情曲線です。結婚直後がピークになっていて出産直後に急降下していますよね。
そしてこの時期に急上昇しているのが緑色の子供への愛情の曲線です。子供が生まれると一番の愛情は子供に注がれます。
その時に夫への愛情が急に下がってしまうんですが、そこから愛情が回復するのかしないのか、ここが二極化しているということがこの表からも分かるのではないでしょうか。

妻への愛情の変化

またこの表とは別にマイナビ・ウーマンがおこなった出産後の妻への愛情はどう変化をしたかという夫への調査で、出産をしても変わらないという方が6割、愛情が増えたという方が2割にもなるそうです。

その中である夫の意見として出ているのが、出産をした当初は愛情がいっぱいだったんだけど、そのうちに子供優先の度合いが大きくなってしまって、今では会話すらほとんどしてもらえなくなったとか、子育てがうまくいかないことで妻の機嫌が悪いっていう声もあるようです。

この意見を見るだけでも、一緒に子育てができていないご主人だからこそこうした不満が出てるのではないかなと感じました。

赤ちゃんを迎えるために何の準備が必要?

では愛情が低迷しないように、具体的にご主人さんが妊娠中にできるサポートをお伝えしていきます。

出産は簡単なことではないですよね。
つわりで体調が優れなくて1日中ずっと寝ていたという方もいると思いますし、大きくなってきたお腹で腰が痛いとか、ちこつが痛いとか。あとはホルモンの影響で気持ちが不安定になったりもします。
出産までにそれぞれいろいろなドラマがありますよね。

命がけでお母さんになる

私は出産の現場からは離れていますが、今までたくさんのお産に立ち会わせていただいてきました。そこで感じたことは、出産は子どもが元気に生まれてくるということが当たり前ではないということです。
お母さんが心も体も元気で出産を迎えることができること、そして赤ちゃんが元気に産声を上げて生まれることって本当に奇跡なんですよね。
なのでお産に携わっていた時も、子どもの産声を聞くまで本当に気が抜けないなっていうのをずっと感じながらお産に携わっていました。
お母さんも命がけでお母さんになるんです。

まずご主人にやってほしいこと

では命をかけて出産をする奥さんに旦那さんができることって何でしょうか。
たくさんできることってあると思うんです。まずは全力で子育てを奥さんと一緒に行ってください。
そして奥さんをいたわる気持ちを持って、支えてほしいなと思います。
仕事ややることがあったとしても、それを差し置いて奥さんを最優先に考えてほしいんです。
例えば奥さんからちょっと何か手伝ってとか、こうしてほしいと声がかかったら、何かしていても手を止めて奥さんのそばに駆け寄ってください。

育休取得を考える

あとは、育休取得を考えてほしいです。
できる限り長い育休を取得できればいうことはないですが、なかなか仕事の都合とかでそうはいかないですよね。なので心身ともに少ししんどい産後1ヶ月だけでもいいので育休を取得してほしいです。
大切なことは奥さんと一緒に育児のスタートを切ることです。

昨年10月から新しく産後パパ育休というものがスタートしました。生後8週間の間に4週間まで産休を取得することができます。分割して休暇も取れるので、ご主人はぜひ検討していただけたらと思います。
保健センターで勤務をしていても、ここ2〜3年パパの育休取得率はすごい増えている印象です。ママからは旦那さんが育休取得をしてくれたことで、落ち着いて育児ができているという声が多いことも確かなんです。

出産はあくまでスタート地点

産後女性のパートナーへの満足度として、立ち会い出産の有無は影響がほぼないというふうに言われています。出産にご主人が立ち会いたいとか、奥さんが立ち会ってほしいというご夫婦は多いと思いますが、出産はあくまでスタート地点で、その後の子育てを2人で取り組んで、喜びや苦労を一緒に分かち合うということが大切だと思っています。

ご主人ができること

これまでお話をさせていただいたこと以外に、ご主人ができることをお伝えしていきます。

自分のことは自分で

ご主人ができること1つ目は、自分のことは自分でしましょう。

例えば食事の支度であったり、洗濯、服の準備など自分でできることを奥さんに任せているということはないですか。
子どものパパ、ママになる準備期間中にぜひ家事分担の見直しもしてください。
”名もなき家事”って聞いたことありますか?本当にたくさんあると思うんです。
例えば、洗濯物を干すときも、洗濯機から服を出して洗濯カゴに入れて、重いカゴを持って洗濯を干す場所に持っていく。そこから人によっては洗濯ばさみとか洗濯を干すものを用意して、シワがないように伸ばして干すとか。
あと、ゴミを捨てるのも、家のところにあるゴミを集めて、もしかしたらゴミの収集日が翌日だから前日に掃除機かけようとか。ゴミを出すということだけがゴミ出しの仕事ではないです。

今、何気なくできている家事が妊娠後期の大きくなってきたお腹で奥さんができるのかな、とか出産した直後の体で今と同じようにできるのか、ご主人が協力できるところはないのかなというのをぜひ見直しをしてみてください。

赤ちゃんに害のあるものはやめよう

次は当たり前ですが、赤ちゃんに害のある煙草などは今のうちにやめておきましょう。
副流煙の害はよく聞いたことがあると思いますが、三次喫煙といって喫煙者から出る吐く息や喫煙者が座る椅子などの家具にそのまま椅子に座ったりすると、喫煙者は煙をまとっているのでそこから煙に含まれている成分が染み出してしまい、同じ空間にいる人に健康被害が出ると言われています。
子どもが生まれてお子さんをカーペットなどに寝かしたり、寝返りをするようになる生後5〜6ヶ月頃にカーペットをコロコロと動く際、そこにいけない成分が染み込んでいることでお子さんに被害が及んでしまうことがあります。
妊娠前からやめることが理想ですが、既に妊娠されている場合は今からやめていただけたらと思います。

奥さんの話を聞こう

3つ目は「奥さんの話を聞いてください」。
男性脳と女性脳の違いもありますが、男性は問題に対して解決策を考えてしまいがちです。
女性は答えを求めているわけではなく、ただ話を聞いてほしいということが多いです。
なので何か奥さんから話を聞いてほしいと言われたら、「そうか」と相槌をしたり、「なるほど、大変だったね」と言ってあげると奥さんの気持ちが楽になると思います。
ただ聞くということをしてほしいです。

私が主人から言われてすごく嬉しくて今でも心に残っているのが、旦那さんも仕事から帰ってきて疲れていたはずなのに、疲れた顔色も見せずに「今日も一日お疲れ様、ありがとう」と何回か言ってくれてたことです。ちょうどその時、私は子どもと日中を過ごしていて大人と喋る時間がなく、本当に息が詰まっていたので、そう言ってくれた言葉で気持ちがすごく楽になったんです。
なのでそういった声かけしてくれた主人には今でも本当に感謝をしています。

奥さんにマッサージをしよう

最後は、奥さんにマッサージをするということです。
妊娠をすると、腰の痛みや股関節の痛みなど様々な体のトラブルが起こりやすいです。
原因は、関節や靭帯を柔らかくするホルモンが分泌されるからです。大きくなったお腹を支えようと、姿勢が変化をすることで体のトラブルが起こります。

全国にあるマタニティ整体で施術を受けて体を整えるという選択肢もありますが、まずは信頼しているご主人が奥さんの体に触れることでリラックスを促して、そこからオキシトシンという幸せなホルモンをたくさん分泌してください。
オキシトシンは幸せな気持ちだったり、気持ちをポジティブに持っていってくれるホルモンです。このオキシトシンホルモンは分泌の時に子宮の収縮を促す役目であったり、母乳分泌にも関与しているホルモンですので、妊娠期からご夫婦でマッサージをして触れ合うことでオキシトシンに対する感受性を高めていただけたらと思います。

マッサージの方法

まずは足だけマッサージをする、腰のマッサージをするなど一部分だけでも触れ合うことが大切だと思います。
NPO法人日本マタニティ整体協会の代表理事が監修した動画を見ていただき、奥さんにマッサージを行うときに参考にしていただけたらと思います。

出産準備のために妊婦さんはリラキシンというホルモンが分泌されます。
このホルモンが分泌されると、骨盤を支えている3つの関節とその関節に結合している靭帯というところが緩んでいきます。その緩んだ関節や人体の代わりをしているのが筋肉なんです。

骨盤回りの筋肉、骨盤帯といわれる場所はいわゆる体の中の土台です。筋肉が弱いままその骨盤帯を支えているお尻回りの筋肉が疲れたり、こりが強かったりすると、こり固まったものが痛みとなってそこからトラブルに発展してしまうこともあります。
なのでご主人がお尻回りをほぐすことで血行を促進したりするケアが必要です。

また、妊娠中は大きくなったお腹によって体の重心が普段より前の方にあるんです。その重心のバランスをとるために、特に上半身が後ろ側の方に倒れて重心を保とうとしています。そういった悪い姿勢をずっととり続けてしまうと身体への負担も大きくなってしまいます。

妊娠中でも基本の姿勢は脊柱をまっすぐにさせることを意識していただきたいです。
脊柱をまっすぐに立てるように意識をすることでお腹に余分な圧がかからず、自然と良い呼吸ができるようになります。そのために先ほど動画で見ていただきました背中周りの柔軟性も必要になってきますので、背中・腰をさすったり、今回の動画をご参考にいただいてご夫婦でマッサージをしていただけたらと思います。

心技体のピラミッド

この心技体ピラミッドを見たり聞いたりしたことがある方もいるかもしれませんが、赤ちゃんが可愛いとか赤ちゃんのために頑張ろうって思う気持ちってすごく大事です。ただ、そういった心だけでは育児をすることはできません。

子育てをしていくのはパパやママ自身

今の妊婦さんや旦那さんは年齢的にももしかしたら赤ちゃんを見たことはあるけどもお世話をしたりとか、触れ合ったことがないっていう方が多いかもしれません。ですので赤ちゃんが生まれた後の生活が分からないまま親になる方も多く見られます。
出産前のパパママ教室や出産後の入院中に抱っこの仕方、授乳の仕方、おむつの交換などを指導してもらえるのですが、それをお家でも実践をするという育児の技も必要になってきます。
その心と技を使って子育てをしていくのはパパやママ自身の体ですので、その土台の体が損なわれてしまうとピラミッドは小さく不安定になってしまいますよね。

子育てって本当に24時間休むことができません。
体が損なわれている状態、すなわち思うように動かない体であったりとか、どこかに痛みやトラブルを抱えている状態では本来持っている力が発揮できませんので、おむつ替えとか授乳とか抱っことかの技の部分が損なわれてしまうことになります。
その状態が続いてしまうと土台が支え切れずに心もポキッと折れてしまうので、女性のみならず、男性も産後の鬱があると言われています。

2人で支え合いながら育児をすることはとても大切だと思いますが、頑張りすぎず、限界になる前に親やお友達、あとは保健センターなどたくさん相談できる人を見つけておいてください。
お二人で頑張りすぎないようにすることも大切だと思います。

妊娠中から夫婦の触れ合う機会を増やしましょう

出産後に子どもと触れ合いながらコミュニケーションや発達を促すベビーマッサージがあるように、妊娠中から奥さんと旦那さんの触れ合う機会を増やすことでお互いの満足度が高まるのではないかと思います。
そのマッサージの時間で自然とコミュニケーションを取る時間が増えて、その時にお互いの育児に対する考え方のすり合わせを行うことができますよね。結果、お互いの育児の負担が減ります。
そして、2人で育児ができているという満足度につながるのではないでしょうか。

Q&A

Q1.私が食べずわりで太ってしまったことに対して、太ってない人もいるから管理が足りないよねと言われてしまい悲しかったです。つわりについて分かってもらう良い方法はありますか。

病院で特に何も言われていなければ体重のことは気にしなくていいかなと思うんですけど、つわりってなかなか旦那さんとか男の人には理解してもらえないですよね。

例えば旦那さんが1週間ずっと船の上で過ごしてみたらどう思うとか、ずっと嫌な匂いの中に閉じ込められていたらどういう気持ちになるとか、そういう例えぐらいでしかイメージを持ってもらうことはできないですよね。
あとは職場の女性で出産経験のある人に、どういう風に過ごしていたか聞いてみてもらって、うちの奥さんだけじゃなくてみんなこういう気持ちだったんだっていうのを第三者から理解してもらうのも良いかなと思います。
第三者の方がそれが当たり前なんだよって言ってくれるといいですね。そうすると奥様の方も気持ちがちょっと楽になるんじゃないかなと思います。

Q2.電子タバコにもいけない成分が入っているのでしょうか。電子タバコにしたら大丈夫と夫は言っているのですが、私は心配です。

電子タバコは害はないからいいんじゃないかって言ってる方がすごい多いです。
まだ電子タバコ自体が世に出回ってからまだそんなに経っていないですよね。なので確実な害というのは私も勉強不足なところがありますが、あまり見えてきてはいないと思います。
ただ絶対的に害がないと言い切れるのでしょうか。吐く息には有害物質がないと前CMでうたっているのを見たことがある気もしていますが、そんなことはないと思ってるので、やめるに越したことはないと思ってます。

Q3. マタニティ整体でパパ整体はどのようにしたら受けられますか

まずはお近くにあるマタニティ整体をぜひ検索してみてください。そこのセラピストがパパ整体の手技を習得しているのであればお伝えできますし、そうじゃなければ近くのセラピストでできるだけサポートをしていきたいと思っています。

Q4. 腰が痛いのでマッサージに行きたいのですが、まだ妊娠初期のため断られてしまいます。何ヶ月くらいからマッサージを受けても大丈夫なのでしょうか。

いわゆる安定期からマッサージができるようになるというところが多いです。
私も妊娠初期の時すごく気持ちが悪く、もともとマッサージが好きだったので行きたかったんですけど、どこでも断られちゃうし、でも痛すぎて隠していこうかなと思ったんですけどなんかあったら怖いしなと思って結局行けずにしばらく我慢してましたが、安心して受けられる場所があるといいですよね。
初期ってつわりもそうだし、つわりによって背中周りとかが結構コリが強いということもあるので、ぜひ初期の方でも安全な施術をしている当局に問い合わせいただけたらと思います。

Q5.どのように声をかけたら気持ちよく旦那さんにやってもらえるか、何かヒントあったら教えてください。

旦那さんや男の人って理論的に入ると結構納得する方って多くないですか。
あってこれをやって欲しいんだって言っても、具体的に言わないとピンとこないというか、実際やってもらえなかったりもするので、分担の表があると良いです。

洗濯ひとつにしても、洗濯機から取り出す人は誰?旦那?私?という表がホームページで探すと出てきます。
そういった表を使って、私これだったらできるよというのに丸をつけたりとかして。それでここは僕がやる、ここは私がやるっていう分担を決めていただくのはどうでしょう。

女の人って次やることを先読みして考えれるんですけど、男の人って決めつけちゃいけないんですけど、その場やってはい次って方が多い印象です。
もともと女性の方がマルチタスクが得意で、男性は目に見える理論的なこととかが好きですよね。
なので、表がある方が絶対納得しやすい。私が60個やったらあなたが10個ねと言ったら納得してやってくれそうですよね。

BELTAでは、ライフステージの変化によって生まれる不安や疑問を笑顔に変えられるように、資格を持った専門家やプロフェッショナルが実施したイベントをレポートとしてお届けしています。本日共有した内容が、皆様の参考になれば幸いです。